社長の戒め

私のメンターである横田英毅さん(ネッツトヨタ南国 取締役相談役)は、社長時代から意識されてきたことがあります。それは、例えば社員さんと廊下などですれ違う時は自分から道を空けるとか、社員さんと集合写真を撮る時は中央に座らないとか、宴席では上座に座らないとか、高級な社有車には乗らないなどです。これらはすべて不遜にならないように、自分を戒めるためにされてきたことだと思います。
私はすぐ調子に乗る方ですから、厳に意識する必要があります。幸い、横田さんの背中をずっと見てきましたので、なんとか私も教えを実践してこられたように思います。

かつて、私は父の会社を継いで社長になったばかりの頃、高級外車を社有車にして乗り回していました。今から思えば一種のコンプレックスの裏返しでした。いい車に乗れば、自分も一流になれたような気がしたのです。
高級外車は、お客さまから大不評でした。「掃除屋の分際で、こんな車に乗りやがって」と思われたのでしょう。ありがたいことに、直接「会社がどれだけもうかっても、決して役員車を高級外車にしたらいかんよ」「もうけすぎているんやないかと思われるから、やめときや損をするで」と忠告してくださるお客さまがいらっしゃいました。目が覚めました。以降、私はコンパクトなトヨタ・ファンカーゴや軽自動車のダイハツ・タントやトヨタ・タンクを社有車として20年以上乗り継いできました。
コンパクトカーはお客さまから好評でした。それに乗っているだけで会社にメリットがありました。ゴルフ場へ行く時は、キャディーバッグがトランクルームに入りませんから、助手席に載せて行きましたが、これがまた好評で、それだけで「あいつはええやつや」と褒めてくださいました。

昔、私がベンツに乗っていた時、唯一車を褒めてくださった経営者さんがいます。横田さんです。横田さんは、車を見るなり「うわー、いいねえ」「エンジンルームを見せてよ」と、一緒になって喜んでくださいました。横田さんは、年齢、肩書、車種などで人を見ない方です。これも私の戒めになっています。
今は会社の車は変わらずタントや軽四です。
先日昔から親しくしてくれている方が教えてくれました。
昔宴会に三翠園に来て車を置こうとした時に駐車場係の方に叱られたそうです
「そこには車を置いたらいかん」
なぜ?
「そこは社長車を置くところだから」
むかし~は玄関のど真ん中に黒塗りの社長車が置いており
豪華な秘書付社長室もあったようです。