カフス

2022年10月~2023年9月まで不定期で高知新聞さんの勧進帳の連載をさせて頂きました。
採用になるのは難しかったですが書いてきたものをここにアップさせて頂きます。

かつて、南国市に自分のことを怪物と称していたお医者さんがいた。彼は、人と人をつなぐことが大好きな人物で、なぜか政財界に恐ろしい人脈をもっていた。故郷の宿毛線の開通にあたっても、仲の良かった時の運輸大臣に直接働きかけ

たという逸話があるほど豪快な人物だ。
葬儀でも橋本元知事が弔辞で「あなたはフィクサーだった」と称賛の言葉を送った
彼には、仲良くしていたジャーナリストがいた。彼は、その人と政財界の人を呼んでよくマージャンをしていた。僕も卓を囲んでいた1人だ。僕は三十歳前だったが、父の代からかわいがってもらっていた。
さて、その人が、これまた政財界に顔が広く、よく夜もご一緒させて頂き色んな世の中の話を聞かせていただいたものだ。その人は、オシャレで夏でもブランドの背広を着込み、長袖のワイシャツを着て、カフスボタンを付けていた。その理由は、話を聞きたい相手と同じような格好をしていないと、取材時に対等になれないからだという。
僕は、当時、会社の作業服でうろちょろしていたが、「制服には価値はあるが外にでる時はやはりキッチリした背広がいいよ」と言われ、僕もその人のマネをして、カフスボタンまで付け始めた。僕は直ぐにその人をマネしたが、最近カウスボタンをした若い方を見かける事は殆どなくなった。(夢)