優先すべきは売上か利益か?

今年は、事業改善を相当数行いました。大きな決断もしました。日々の細かな改善を含めると、おそらく300件近くになると思います。
 なぜ、これほど改善すべきことが多いのかというと、理由の一つとして、安易な営業戦略が挙げられます。これを戦略といえるかどうかも疑問ですが、「他社がやっているから」というだけの安易な理由で始めた事業がなんと多いことか。
 もう一つの理由は、やりっぱなしが常態化していたことです。新しいことに挑戦するのは大事です。しかし、やってみてどうだったのかの検証がありません。しかも、どんなにしんどくても見直しをしませんから、しんどいままのコストアップ事業になっていました。
 その一例としてお弁当の配達事業があります。これは私が社長に就任して真っ先に驚いたことでした。1個800円のお弁当を1日30個位配達していたのです。聞けば、お客さまに大変好評だったといいます。それもそうでしょう。老舗旅館のお弁当が800円で食べられ、しかも配達までしてもらえるのですから、お客さまは大喜びだと思います。
この事業を始めた時はコロナ禍でしたから、会社を回していくために、なんでもしようということだったのだと思います。他社もテークアウト販売をしていましたので、それに追随したのでしょう。しかし、肝心の利益はというと、まったく採算がとれていませんでした。というのは、配達の経費だけでなく、お弁当箱を使い捨てにしなかったために、回収して洗う人件費もかかっていたからです。
このお弁当事業のねらいは、お弁当を食べた人が宴会やブライダルにつながってくれることにあったようです。しかし、実際どうなっているのかの検証はしていませんでした。なぜかというと、スタートすることがゴールになっていたからです。本来、事業のゴールは利益を出すことです。ゴールを勘違いしていたのだと思います。
 しかも、当初のもくろみに反して、お弁当は宴会の呼び水にはなりませんでした。それもそうだと思います。安価なお弁当を求めるニーズと、高価なホテルの宴会やブライダルのニーズは異なるからです。
これでは利益なき繁忙と言わざるを得ません。即やめるべき事業だと思いました。とはいえどもお客さまにご迷惑をおかけするわけにはいきませんので、代わりの業者さんをご紹介させていただいた後、当社はこのお弁当事業から撤退させていただきました。
 もう一つの例は喫茶珊瑚礁におけるランチ営業です。喫茶コーナーで定食を出せば客単価はアップしますし、それなりにコーナーは賑(にぎ)わいます。しかし、ランチ価格にしなければいけません。結果、プロの料理人が丹精込めて作った料理を安くご提供することになりました。これは、お客さまにしてみれば「おいしくてコスパ最高」ですが、当社にしてみれば「おいしくなくコスパ最悪」です。しかも、お客さまはお車で来館されるため、お昼時になると駐車場は大混雑します。結果、駐車場の誘導スタッフを増やして対応せざるを得ませんでした。唯一メリットは職人さんが色んなメニューを考えて技を磨けることと社員さんが美味しい昼食を堪能できる事でした。
ランチといえども事業である以上、こうしたコストを含めて利益を出さなければいけません。しかも、ランチの定食が宴会需要を喚起した事実もあまり認められませんでした。波及効果もない以上、事業として続けるわけにはいきません。喫茶でのお食事提供は今年いっぱいで終了させていただくことにしました。
三翠園のランチは凄いまでにしてくださった職人さんに心から感謝しかありません
 日帰り温泉の入浴料についても、他社にならった安易な割引営業を改めました。これまでは、○○会員なら割引、△△会員なら割引というように、やたらと割引だらけでした。
これについても、割引の効果が検証できていませんでした。割引を利用した会員さんの人数は把握していますが、割引による効果は不明でした。
受付でリサーチしたところ、どうやら会員割引があるので来館したというわけではなく、来てみたら会員割引があったというパターンが多いことがわかりました。これって割引する意味があるのでしょうか。この温泉割引についても、費用対効果が認められませんでしたので、取りやめにしました。結果は予期した通り、利用者の人数が減ることはありませんでした。

こうした営業戦略は、すべて売上を優先する考え方に起因しています。一般的に、企業は利益を得ることで新たな投資や事業の存続ができますので基本は利益を優先します。ましてや経営の立て直しをしている当社は、何よりも利益優先で営業戦略を考えなければいけません。
当社がまねをした安価なお弁当販売ですが、大手は、テークアウトにして、しかもきちんと利益が出るようにグラム単位で原価計算をした上で、大量販売をしていたのだと思います。これなら薄利多売で利益が出るでしょう。しかし、当社は単なる薄利“少売”でした。安易に他社のまねをしていたら皆が幸せになれないのです。
経営は、時代の変化に対応することです。新しい挑戦もしていかなければいけません。その挑戦の原資になるのは利益です。その観点からも、優先すべきは間違いなく「利益」であり、検証すべきはシナジー効果(波及効果)だと思います。