クレームは現場で起きている!
経営者のタイプとクレームの発生には関係性があるように思います。今回は、その関係性についてお話しします。
経営者にはいろいろなタイプがありますが、クレームのマネジメントについては、二つのタイプに大別できると思います。一つは、部門を所管する役員・幹部に全て任せるタイプ、もう一つは自ら現場に関わっていくタイプです。前者は主に大企業で、後者は中小企業でよく見るタイプです。
私は、後者のタイプです。例えばお客さまからお部屋の清掃のことでクレームが入ったとしたら、ベッドメーキングの仕方、清掃の仕方、備品交換の仕方、清掃チェックの仕方など、現場に直接足を運んで、どうしてそうなったのかを徹底的に調べます。
これは、組織的な対応とはいえませんが、クレーム対応が会社をよくすることになると確信していますので、ことクレームに関しては、全件、自分の目と耳で調べるようにしています。なぜなら、納得がいかないと効果的な解決策を打ち出せないからです。
「あれやっとけ」「これやっとけ」と現場任せにしてうまくいけばそうしたいのですが、残念ながら私の場合、うまくいったことがほとんどありません。
三翠園の場合、これまでの経営者はクレーム対応の経験が豊富ではなかったこともあって、クレームが起こったらほぼ現場任せだったようです。何か事件が発生すると、「これはいかんぞ、うまくやっとけ」となります。そして、同じような事案が再発すると「あれほどやっとけと言うてるのに、できてないじゃないか!やっとけ」となり、またまた再発すると、またまた「やっとけ」が繰り返されます。しかし、「やっとけ」では何も解決しません。
他社の旅行サイトの書き込みを見ていても思うのですが、同じようなクレームが発生するということは、現場が根本的な解決方法を知らない証拠です。現場は、常に自分たちの能力の範囲で対応します。もし、現場の上司も根本的な解決方法がわからない場合、「これからは注意してくれ」とお願いするしかできません。その結果、ミスが繰り返され、上司は次第に語気を荒らげてお願いするようになります。叱られた社員さんは、気をつけようとはしますが、再発してしまいます。これは現場にとって不幸としかいいようがありません。
ミスが再発する場合、それは現場担当者のうっかりミスというものではなく、ほとんど組織構造に起因するミスだと思います。これは現場の責任ではありません。そういう組織構造を放置している会社のせいであり、まさしく社長のせいです。ですから、そこを根本的に改善しない限り、クレームは減らないというのが、過去5000件のクレームに対応してきた私の結論です。
組織としての問題だからこそ、社長の私が現場で原因を調べて、うまくいっていない箇所を直す必要があるのです。徹底した調査が土台になりますので、なぜ社員さんはそのように動いたのか、それを聞いた上司はどうしてそのような判断をしたのか、などかなり細かくヒアリングしています。
ここでよく、犯人捜しをしているのではないかと勘違いされることがあります。すると、「責められるのではないか?」という恐怖心から、誰のせいかなど聞いてもいないのに、人のせいにしたり、他部署のせいにしたりする現象が発生します。三翠園でも私が社長に就任した当初はそうでした。
しかし、故意にミスをしてやろうなどと考える人はまずいません。皆、ミスなんかしたくないのです。したくないのに、組織的な問題でミスを起こしてしまうのです。ミスをした人は、いわば会社の被害者です。被害者を責めるつもりは毛頭ありません。組織を直すために、原因が知りたいだけです。
ミスにつながったプロセスを丹念にトレースしていくと、根本原因が見えてきます。そこを直していけばミスはなくなり、クレームも確実に減っていきます。
よく異業種の人から、クレームが多くて困っているという相談を受けることがあります。その場合は、経営者が現場に入って、プロセスを徹底的に調べることをお勧めしています。それを実践した経営者さんからは、「現場が劇的に変わって、お客さま対応力が上がった」と喜ばれています。
刑事ドラマシリーズ『踊る大捜査線』では、「事件は会議室で起きてるんじゃない。現場で起きてるんだ!」というセリフが有名ですが、クレームも現場で起こっているのです。経営者が現場に立たなければ、クレームはなくならないと思います。