採用が肝心(事前審査その1)

私のメンターの1人であるネッツトヨタ南国の横田さんには、いろいろなことを教えていただきました。その中に「会社をよくする一番の方法は採用だよ」という究極の教えがあります。
教えていただいた当時は、「そうはいっても、入社した人が辞めてしまうこともあるので、会社をよくする方法は採用だけじゃないと思うけどなあ」という気持ちがあり、あまり採用を重視することはありませんでした。しかし、社員さんに関するいろいろな出来事を経験していくうちに、「これって、入り口段階で絞り込んでおけばこんなに苦労することもないんじゃないか」と思うようになり、真剣にリクルート(人材募集)について考えるようになりました。
最初にしたことは、態勢の見直しです。電話応対の改善から始めました。リクルートの問い合わせは電話で入りますが、担当者が不在であることもよくあります。従来は、電話に出た人が「すみません。担当者がいないのでわかりません」とだけ言って、電話をガチャと切っていました。これを改める必要がありました。リクルートの電話に出たら、必ず、相手の電話番号を聞いて、担当者から折り返し電話をかける旨を伝えるように徹底しました。
一方、社歴が長く、仕事ができる人は、リクルートの問い合わせに対して、自分の経験を含めていろいろ説明しようとしてくれます。それ自体はとてもありがたいことなのですが、採用条件など具体的な話になると、採用担当者ではないため情報をもっておらず、不確かな説明や誤った説明をしてしまう恐れがあります。実際、面接している時に「問い合わせした際に説明されたことと違う」と指摘されたこともありました。
そこで、リクルートの電話がかかってきた時に、誰でもミスなく説明できるように、いまどんな募集をしているのか、どう説明するのか、など説明する内容をボードに書いて、皆で共有できるようにしました。しかし、これもうまくいきませんでした。普段、現場で掃除の作業をしている人が、忙しい合間に電話に出た場合、流ちょうな説明ができないこともあり、相手に「感じ悪い」と思われる恐れもあったのです。
対策としては、全員の電話応対レベルを引き上げるか、特定の人に電話応対を限るかしかありません。前者は現実的ではないため、後者でいくことにしました。具体的には、リクルート専門回線(求人ダイヤル)を設けて、採用担当者以外、その電話には出ないように決めました。
しかも、求人ダイヤルは、平日の9時半から17時までの受付とし、それ以外の時間帯は音声自動応答で、「後日、お掛け直しください」とご案内しました。受付時間を限定した理由は、早朝、夜間、土日などに電話が鳴り続けてしまうと、近くの人が見かねて電話に出てしまうからです。時間外は電話が鳴らないようにする必要がありました。
しかし、こうした態勢は、電話を受ける側には合理的ですが、電話をかける側にとっては、不親切であり、不利益です。土日はダメ、朝は9時半にならないとダメ、夜は17時以降はダメ、とダメづくしです。しかも、フリーダイヤルではありません。電話代は就職希望者に負担してもらいます。
競合他社の中には、フリーダイヤルで、受付時間も長い会社があります。こうした態勢は人材獲得という面でいえばデメリットになります。しかし、私はこうすることで、結果、採用する人の質を上げられるのではないかと考えました。
電話をかけてくる人の中には、「専用ダイヤルにお掛けください」とアナウンスしているにもかかわらず、そんなことはお構いなしに、会社の代表電話に電話してきたり、土日に、事故対応の緊急ダイヤルに電話してきたりする人がいます。こういう人は、ルールを守れない人です。採用すると、現場でいろいろなトラブルを引き起こしかねません。こういう人は、面接をする必要もありません。このように、専用ダイヤルにして、いろいろ制限をかけたことで、結果、面接前の事前審査にもなったのです。
(その2に続きます)

写真は野菜たっぷりのカルボナーラ