高知「志」教師塾

私は、知事より教育委員を拝命し、2005年度から2008年度までの4年間、教育委員会に籍を置いていました。その際、当時教育長だった大﨑博澄さんと出会います。大﨑さんは弱い人の声に耳を傾け、自ら率先して人の悩みと向き合った教育長でした。
その後、大﨑さんとご縁があり、「一緒に世直しをしよう」ということになり、大﨑さんが「たんぽぽ教育研究所」を立ち上げる際、少しだけ四国管財も支援させていただきました。
「たんぽぽ教育研究所」は、不登校、いじめなどで悩んでいる親子、職場関係でハラスメントを受けている社会人など、「どんな人の相談にも乗る!」という大﨑さんの覚悟と志に基づいて設立された私設の相談所です。
私は、教育委員になったことで、大﨑さんを筆頭に、多くの教育関係者と親しくなることができました。学校の講演にも招かれ、200校程の学校でお話しする機会もいただきました。こうした教育活動をしていくうちに、教育現場の課題が次第にわかってきました。
時を同じくして、私が尊敬する友人の鬼澤慎人さんが高知県の「こうち人づくり広域連合」や教育機関などでいろいろな支援をしていました。鬼澤さんは茨城県経営品質協議会をゼロから立ち上げた立派な人物です。
経営品質については、四国管財で日本経営品質賞を目指していた時に勉強しましたので、よく知っています。この経営品質の考え方は、教育界の課題解決にも使えると思いました。しかし、私がそれを提言したのでは説得力がありません。そこで高知で研修をしていた鬼澤さんの力を借りようと思いました。
たまたま、新しく教育長に就任した中澤卓史さんと鬼澤さんは、中澤さんが商工労働部長さんだった時からの顔なじみでした。私は鬼澤さんに、「経営品質の考え方を使って教育界を変革することを中澤教育長に進言してほしい」とお願いしました。「それはいいね」となり、早速、私は鬼澤さんを教育委員会にお連れしました。
鬼澤さんと中澤教育長の対談によって、「高知「志」教師塾」という先生の塾が開校することになりました。以降、形を変えながら今に至っています。
今年の3月に退任された伊藤博明教育長も「高知「志」教師塾」を大変熱心に後押ししてくださいました。印象に残っているのは、「高知「志」教師塾」の発表会でのことです。1年間の活動を総括する発表会ですが、伊藤教育長は最初から最後まで出席され、ご意見を述べられたり、皆さんと意見交換されたりしました。普通、教育長は多忙ですから、1日中出席するなどあり得ないことです。それくらい教育界の発展と若手育成に熱心な方でした。
その日の意見交換会では、大変ありがたいサプライズがありました。伊藤教育長が話の終わりに、拙著「かかわる人を幸せにするお掃除会社」を取り出して、「この本の筆者とは面識はないが、この本の内容は素晴らしい。聞いた話では高知県内の小・中・高校の図書館にあるようだから、ぜひとも読みなさい」と言ってくださったそうです。そのことを後から鬼澤さんから聞きました。
大変うれしく、感激しました。教育界に少しはお役に立てたかなと思いました。と同時に、「ハッ」としました。中学校と高等学校には、生徒さんに読んでもらうために本を寄贈しましたが、小学校には内容的に難しいと思って寄贈していなかったのです。
しかし、伊藤教育長の話を聞いて、先生方に読んでもらえばいいことに気づき、急いで高知県の全ての小学校に寄贈させてもらいました。

本のつながりがもう一つあります。教育委員時代から非常に親しくしていただいた方で、元教育センター長(2011.4-2014.3)で、現在、教育センター企画監・兼 次世代型教育推進部長の濱田久美子先生が、私の本を読んでくださって「ぜひ今期の「高知「志」教師塾」の講師をお願いしたい」とおっしゃっていただけたのです。当然、喜んでお引き受けいたしました。
本年8月、Webによるリモート開催でしたが、30名程の学校の先生方を前にお話しさせていただきました。内容は、私が今までやってきたこと、そして教育界に関する自分なりに把握している課題とその解決方法です。
講義に先立ち、事前アンケートをお願いしました。教育界の課題と自分の課題を100個書き出してくださいというものです。そうしたら、本当に100個あげてくださったのです。膨大な数の課題が集まりました。30人×100個ですから3000個にのぼりました。今、その全てを読んで、自分なりに考えをまとめています。近々、全員の方にお返事します。
このWebセミナーでは、思いがけずうれしいことがありました。四国管財は、新任2年目の先生を半年間企業で預かるというプログラムに参加しており、過去、20人以上の先生を預かってきました。その先生たちは、現在いろいろな学校で活躍されています。
今回、Webセミナーの参加者の中に、その卒業生がいらっしゃいました。これには、驚くとともに、なんかうれしくなりました。自分たちのしてきたことが、今につながっていることが実感できました。その先生とは、「次回はぜひリアルで会おうね。コロナが終息したら食事にいこう」と約束をしました。今から、その日が楽しみです。