予期せぬ電報

前職の四国管財では、社員さんの数が600人を超えていましたので、うれしいことも、悲しいこともたくさんありました。
社長業をしていて一番つらかったことは、お葬式が多かったことです。特に社員さん関係のお葬式には心を痛めました。社員さん、元社員さん、社員さんのご両親、ご兄弟、お子さんなどいろいろなお葬式に参列しました。中でも、お子さんのお葬式ほどつらいものはありません。非常にお気の毒で、お悔やみを申し上げるしかできませんでした。社長業は、人と出会う回数が多い分、お別れする回数も多くありました。

一方、社長業をしていて、うれしかったことは、「子どもが生まれました」「孫が生まれました」「結婚しました」という情報に数多く接することができたことです。
私は、お子さんが生まれた時は、そのお子さんやご両親を主人公にした世界で1冊しかない絵本をプレゼントさせていただきました。これは大変喜んでいただけたと思います。
お子さんの結婚式に招待していただくこともありました。これもうれしい出来事です。とはいえ、それは非常にレアケースです。ほとんどのケースでは、お子さんの結婚式にサプライズで電報を打っていました。では、どうやってお子さんが結婚するという情報をキャッチしてきたかですが、情報は二つの経路でつかんでいました。
一つはお休みの情報です。当社では有給休暇の申請に際して、その理由を書いてもらっています。もちろん、どんな理由で休んでいただいても構いません。理由を会社に知られたくない人は書かなくても構いません。会社が理由を把握する目的は、会社として、社員さんのためにいろいろなことをしてあげたいからです。情報をキャッチすることで、会社は、勤務シフトを調整してあげたり、ちょっとしたお祝いを準備してあげたりすることができるようになります。
休暇の理由を見ていくと、その人の背景がいろいろ見えてきます。例えば、「ご主人の具合が悪くて病院へ付き添って行かなければいけないから」という理由なら、ご家族が大変なことがわかります。「子どもの進学の三者面談があるから」という理由なら、お子さんの進学で気を張っていることがわかります。
この休暇情報の中に「子どもの結納があるので」というような情報も入ってきます。これで、お子さんの結婚式が近いことがわかるのです。
もう一つの経路は日々の会話です。当社はミーティングや研修会をたくさん行っています。その際、社員さんがふともらした「今度ね、うちの子が結婚するんだ」という話を現場でしっかりキャッチするようにしています。これがサプライズのネタになります。当社では、情報をキャッチしたら、なれそめや告白のエピソードなどをさりげなく聞き出してトスアップします。
しかも電報を送るからなど野暮な事は言わずに普通の会話で情報収集を行いますメモなどもあえて取らない様にして当日驚く姿を想像して必死で覚えます。人を幸せにするサプライズですから、皆さん、喜んでトスアップに協力してくれます。
私は、トスアップされた情報に基づき、サプライズ電報の内容を考えました。その電報には、当社に勤務してくださっているお父さんやお母さんへの感謝と、お子さんへのサプライズのメッセージ、そして参列されている方々への本心からのお祝いの言葉を書いていました。しかも長さは半端ではありません この電報は本当に喜んでいただけます。
しかし、このオリジナル電報は、文面を考えるのが大変です。私は感動してもらいたい力は高いのですが国語力はゼロですから、なおさらしんどい作業でした。私は、学生時代、勉強が嫌いで、どの教科もひどい成績でした。中でも国語は誰にもまけないくらいひどい成績だったので、文章をつくるのは大の苦手です。
それを助けてくれたのは、当社の優秀なスマイルサポーターさんたちです。彼女たちには、毎月社内報に掲載する社長のコメントを、皆が読める日本語に直してもらっていました。電報についても、私のひどい原文を「社長これあんまりですよ」と言いながら、喜んで?直してくれました。このように、いろいろな人の優しさによってサプライズ電報はつくられますので、受け取った人は温かい気持ちになれたのではないでしょうか。
振り返ってみると、つらいことも、楽しいことも、うれしいことも、悲しいことも社員さんの数が多かった分、たくさん体験させていただきました。しみじみ、ありがたかったなあと思います。さあ我が三翠園は200人しかおいでません感謝を込めて何ができるでしょうか?