千里の行
ありがたいことに、三翠園の社長になって以来、いろいろな方からアドバイスをいただく機会が多くなりました。ある時、心の優しい、思いやりにあふれた、波動が高い系の知り合いから、こんな助言を受けました。
「中澤さん、なんか笑顔が足りませんね。中澤さんは笑顔がステキなんですから、もっと社員さんに笑顔を振りまいて、社員さんを元気にしてあげたらどうですか?」
「あちゃー、また、ぬかってしまった」。笑顔の大切さは十分わかっており、自分では、笑顔を意識していたつもりでしたが、鏡である他人(ひと)様から見たら、全くできていなかったのです。猛省しました。
とはいえ、新型コロナウイルス感染拡大対策として、マスクをしないわけにはいきません。マスクをしたら、口元は見えません。どうやって笑顔を・・・。すると、魂レベルが高いその人は「マスクをしても、笑顔のステキな人は、マスク越しに笑顔が相手に伝わるもんだよ」と言いました。
残念ながら、私は、その人みたいに魂レベルが高くありませんので、違う方法を考えなければなりません。そこで、少し恥ずかしいのですが、社員さんとのミーティングの場では、透明の飛散防止マスクを着用し、全力の笑顔で話すようにしました。たかがマスクですが、ほんの少しでも社員さんが元気になってくれて、会社がよくなればいいと思ったのです。
このカイゼンで会社が劇的に良くなることはないでしょう。会社が劇的に良くなることとは、前社長と経営陣の皆さんが、勇気を出して翠玉館(新館)を建ててくれたり、耐震問題があった旧館を耐震補強してくれたりしたことです。莫大(ばくだい)なお金がかかりますので、意思決定に際しては、よほどの胆力が必要だったことと推察できます。
先輩たちが、勇気を持って大なたを振るってくださったおかげで、しばらくは劇的なカイゼンをする必要はありません。私がすることは、ちょっとずつ、ちょっとずつのカイゼンの積み重ねだと思います。その絶え間ない「ちょっとずつ」こそが、後に振り返って見た時に、劇的なカイゼンと等しくなっているに違いない、と信じています。
1日、1個カイゼンする会社と、何もしない会社とでは、1年間に365個カイゼンに差がつきます。その気づきを持った仲間が、2人、3人と増え、10人になったら、1年間で3650個もカイゼンができる計算になります。
私の仕事は、そういう社員さんや、そういう仲間を増やしてくれるリーダーたちの背中を押すことです。これこそが社長業だと思います。これは、将来のあるべき姿と現状のギャップを埋める行為であり、まさしく経営そのものです。
「千里の行(こう)も足下(そっか)に始まる」といいますが、まずは手近なことを毎日、コツコツ積み重ねていこうと思います。
※写真は長~い高知県教育センターの廊下です