愉快な手鏡

三翠園の社長に内定した時、事前に準備できることはしておこうと考え、ホテルの業界誌や土佐藩主 山内家に関する書籍を片っ端から買って勉強しました。特に、コロナ対策については、何かできることはないか、ずっと考えていました。
経済産業省の調べによると、新型コロナウイルスの影響を最も受けた業種は、「生活娯楽関連サービス」であり、その中でも、観光関連業、結婚式関連業の業績低下幅は群を抜いていました。
三翠園の三大稼ぎ頭は、旅行宿泊、地元宴会、ウェディングです。この大黒柱がすべて大きなダメージを受けたのですから大変な事態です。最近では、旅行宿泊こそ少し戻ってきましたが、地元宴会については、安心して楽しんでいただけるように何か新たな対策を立てる必要がありました。
そこで同業者さんを調べてみたのですが、どのホテルや飲食店を見ても、高知県が定める「高知家あんしん会食推進の店認証基準」にのっとっているだけで、より積極的かつ独自の取り組みは特にありませんでした。
しかし、実際の宴席では、お客さまはマスクを外しますので、パーティションの効果は限定的と言わざるを得ません。感染対策だけを考えて万全を期すなら、医療従事者の防護服のように、すっぽりビニールで全身を覆ってしまえばいいのですが、それではお酒を飲むどころか、食事も取れません。
しかし、どんな事でも、やり方は100万通りあります。何かできるはずです。何かないか、ずっと考えていた時、ふと見たテレビの画面にくぎ付けになりました。
私は、「探偵!ナイトスクープ」という番組が大好きで、よく見ています。この番組は、一時期、コロナ禍で取材ができませんでしたが、久しぶりに再開していました。見ると、芸人さんが手持ちのアクリル板を手鏡のように持ち、相手と会話をしています。これなら歩きながら会話もでき、フットワークも断然よくなります。
「あっ、これや!」
しかし、アクリル版は高価で、重量もあります。使用後の清掃も大変です。まったく同じ仕様というわけにはいきません。軽量かつメンテナンスが楽なものにする必要があります。アクリルという素材がネックなのです。

 ない知恵を絞って考えたり、知人に相談したりした結果、食品用ラップフィルムで代用することを思いつきました。すぐ、私のゴルフ友だちの会社を訪ねました。その会社はホームセンターなどに、地元の木材で作った「すのこ」などを納品しています。
私は、友人の会社に、軽い材質の木枠を作ってもらいました。枠の中には、市販の食品用ラップフィルムを張れる仕組みにしました。これなら、面倒なメンテナンスがほとんどなくなります。使用後のフィルムは捨てればいいだけです。
ここまでくれば、後は製作です。試行錯誤を繰り返しながら100個作りました。ポケットマネーですが、新しい宴会のスタイルを、高知県から全国に発信できると考えただけでワクワクしました。

この「愉快な手鏡」は、出入り業者の会「三翠会」で披露する予定でした。しかし、残念なことに感染拡大により、会は中止になってしまいました。せっかく準備したのにがっかりでした。
ところが、思いがけず、この「愉快な手鏡」は実戦デビューを果たすことができました。私の友人が「三翠園を本気で励ます会」を催してくれたのです。その際、この「愉快な手鏡」を皆に使ってもらいました。
この会は、こぢんまりとした会なので、持ち歩き具合など、機動力の検証はできませんでしたが、いろいろな手応えはつかめました。友人に感謝です。

まだ、この「愉快な手鏡」には名前がありません。コロナ禍を元気に乗り切れそうな名前をつけようと思います。もし、この器具を使ってみたいという同業者さんや飲食店さんがいれば、県の内外を問わず、できるだけ安価にお譲りしたいと思います。皆で助け合えばピンチはチャンスにだって変えられます。