3人の寛さん ~塚越さんの来訪(後編)~
塚越さんが高知に滞在している間の私の役目はおもてなしです。しかし、塚越さんは何でもご自分でなされるため、飲食などで接待するチャンスはありません。とはいえ、できることをしたいと考え、自分の最大の役目を「塚越さんを守る」ことと決めました。
塚越さんは、持病もなく、至って健康です。しかし、ご高齢ですから、何かあったときに対応できるようにしておく必要があります。そこで、塚越さんが高知に滞在している間は、私も高知パレスホテルに宿泊し、塚越さんのお部屋の近くで見守ることにしました。
さらに、塚越さんには私の携帯番号を大きな文字で書いて渡し、「何かあったら、すぐに電話してください。近くには信頼できる近森病院さんがあり、救急の患者さんをスムーズに受け入れできる体制を整えています。全部、段取りをつけてありますから、息苦しいとか何かありましたら遠慮なくおっしゃってください」と申し上げました。
ちょっとしたサプライズもご用意しました。
私の親友に、株式会社アサヒカガクの平井社長がいます。私より年下ですが、志や経営手腕や考えることは私よりずっと上で、いつも私の相談に乗ってもらったり、愚痴を聞いてもらったりしています。彼も塚越さんが大好きで、自分の子どもの名前まで、塚越さんと同じ「寛」さんにしたほどです。非常にかわいい坊ちゃんです。
私が用意したサプライズとは、懇親パーティーの席で平井寛くんと塚越寛さんをお引き合わせすることでした。いつもは、お子さんが参加することはありませんが、この日、平井さんにはご家族で来ていただいて、しかも岡山の伊那食品の上田寛さんにも加わっていただき、3人の「寛さん」でスリーショットを撮りました。このサプライズには、塚越さんも大変喜んでくださいました。
もう一つ、塚越さんのためにご用意したことがあります。それはゴルフです。私の友人に株式会社ヤマオコーポレーションの鬼澤社長がいます。彼はNPO法人茨城県経営品質協議会の理事を務めており、講師としても活躍しています。その関係で、鬼澤さんは塚越さんの息子さんのことをよく存じており、そのルートで塚越さんが大のゴルフ好きであることを聞いていました。塚越さんに喜んでいただける方法が見つかったのです。
私は、経済同友会の西日本大会が閉会したところで、「もしよかったら、ご予定をもう1日延ばされて、高知でゴルフをしませんか。高知にはいいゴルフ場がありますよ」とお誘いしてみました。よほどゴルフがお好きなのか、私たちの労をねぎらってくださるお考えだったのかはわかりませんが、もう1日高知に滞在して、黒潮カントリークラブで一緒にゴルフを楽しんでいただけることになりました。
当然、「私もゴルフを楽しみました」と言いたいところですが、この日は、ちょうど四国管財が東京美装グループの傘下に入る祈念すべき日でした。人生の節目の日であり、多くの人の支えがあってこの日を迎えることができました。その大事な日に、当事者の私がゴルフを楽しむわけにはいきません。内心、うらやましいとは思いましたが、ゴルフはまたの機会にしました。
後日、塚越さんからありがたいお手紙を頂戴しました。今回のお礼と、「伊那に遊びにおいでよ」というお誘いでした。大変ありがたく、私はすぐに遊びにというか、勉強のために訪問させていただきました。
これは余談ですが、塚越さんが高知に滞在していた間に、もう一つ塚越さんに喜んでいただいた事がありました。それはマッサージです。塚越さんは、ホテルで利用したマッサージさんが大層気に入ったようで、「あのマッサージの人は最高だ」とベタボメでした。連日その方を指名していたそうです。「これや!」と思いました。
あいにく、大会は中止となりましたが、経済同友会の全国大会に塚越さんを招聘(しょうへい)するにあたり、私が真っ先にしたことは、そのマッサージの方の日程を押さえて、貸し切りにしたことでした。