1㍍の定規


2022年10月~2023年9月まで不定期で高知新聞さんの勧進帳の連載をさせて頂きました。
採用になるのは難しかったですが書いてきたものをここにアップさせて頂きます。

30年前、いい会社にするために、いろいろな取り組みをしてきた。その過程で、事務部門の品質を高めることが重要であることがわかった。
ある時、事務部門のレベルアップを目指し、全員で秘書検定の資格取得に挑戦
したことがあった。私は、性格上、人にやらせるだけで自分は何もしない
ということは嫌なので、私も社員さんたちと一緒に秘書検定セミナーを受け、試験に挑戦することにした。しかしこの挑戦は、いかに自分は事務ができないか、周りのスタッフに助けられていたのかを白日の下にさらすこととなった。
試験の前夜、試験案内を読むと所持品に30㌢の定規と書いてあることに気づいた。しかし、日頃、事務仕事をほとんどしないため、定規なんか持っていない。家中を探したが、母の洋裁用の物差ししかない。1㍍もあったが仕方なくそれを持って行くことにした。
さて、試験会場に着いて見回してみると、1㍍の物差しを抱えてきた受験生など私以外に誰もいなかった。当社の社員さんたちは、私を見るなりドン引きし、手を合わせて「絶対に声をかけないで」「知り合いだと思われたくない」と、拝むようなしぐさをしていた。
結果は予想通り私だけが不合格。いい会社にするためには自分のレベルアップが必要ということだ。(夢)