部下が上司を見限るとき~二つのNGワード~
上司が部下に言ってはいけないNGワードが二つあります。これを言われた部下は、心の中でその上司を見限ります。
一つ目は「忙しい」です。上司は本当に忙しいから「忙しい」と言うのでしょうが、伝え方に気をつけないと損をします。日頃、部下の信頼を得るように努力していたとしても、不用意な言葉一つで、部下から見限られてしまいます。
どこがNGなのかというと、「忙しい」とだけ言って会話を終えている点です。この言葉を聞いた部下は「拒絶された」と受け取ってしまいます。自分が振り払われたかのように感じた部下は、ガッカリして「もう相談しないようにしよう」と思うかもしれません。
そうではなく、「ごめんね、今日は○時から○時までお客さまと約束があるので時間が取れないけど、それ以外だったら大丈夫だよ。いつにしようか?」というように、積極的に相談に乗る姿勢を示し、面談日時まで決めるようにしないと、部下は次の相談にきてくれなくなります。上司がここまでするかどうかで、部下の士気は全然違ってきます。上司は、不用意な言葉を使わないように気をつけたいものです。
私は、社内の自分用パソコンの壁紙に、あくびをしている私の似顔絵と「忙しいように見えて暇です」「いつでもご相談ください」というメッセージを表示しています。このように、あらゆる機会を使って、「いつでもいいから相談してね」と呼びかけています。こうした活動をしても、なかなか声をかけてもらえません。
このような私が、部下から言われてドキッとする言葉があります。それは「ちょっといいですか?」です。私はこう言われた瞬間にアウトだと思っています。無意識のうちに「忙しい」オーラを出していたのでしょう。そのオーラが、部下に要らぬ気を使わせて、声をかけにくくしているのだと思います。それがなければ、部下はもっと早く相談にきてくれたかもしれません。全くもって私の努力不足です。
前職の四国管財では、「ちょっといいですか?」などと、気を使われたことはありませんでした。私が何をしていようがお構いなしに、社員さんはバンバン話しかけてくれました。私もそうしていました。こうした風土は一朝一夕にはできません。真摯(しんし)に、社員さんの相談ごとや悩みごとに応え続け、信頼関係を深めていくしかないと思います。
二つ目のNGワードは「担当じゃない」です。この言葉を言われた部下も会話を拒絶されたと受け取ります。
私は、これまでいろいろな上司と面談してきましたが、一番、部下から評価が低いのは、他部門の人から相談されたときに「オレの担当じゃないから、担当に言って」と逃げて、何も対応してくれない上司です。こういう上司は、部下の人望ゼロ、信頼ゼロです。
中には、「オレの担当じゃないから、そこの部署の人に信頼されなくても構わないけれど」と開き直る上司もいます。しかし、こういう人は同じ会社で働く仲間として人望ゼロ、信頼ゼロだと思います。
組織上、自分の担当ではなかったとしても、同じ会社の仲間としてできることはあります。「そうなんだ、大変やね」「それやったら、こうしたらいいね」「なんだったら、僕から担当の人に言ってあげるよ」とか「僕から役員さんに言ってあげようか」というように、“自分ごと”として受け止めて、対応することができると思います。私はそれこそが上司の仕事だと思うのです。担当外の部署の部下からも評価される上司は、会社にとって有り難い上司です。
三翠園でも、組織上、担当制をとっています。役員さんには担当する部門がありますが、それにとらわれず全ての部門に首を突っ込んでくださいとお願いしています。上に立つ役員さんがそういう姿勢を示すことで、社内に「相互支援が当たり前」という風土を育むことができると思います。