事実前提か価値前提か
三翠園は、金融機関さんから大変なご支援をいただいている会社です。金融機関さんに安心していただける数字を出していかなければいけません。実際、金融機関さんからは、数字に基づいた事業計画の検証がなされています。
実をいうと、私はこの数字に落とし込んだ計画づくりが大変苦手です。前職では無借金経営ということもあって、数字化した売り上げ目標というものは立てていませんでした。銀行さんから資金的なご支援をいただいていなかったからできたことだといえばそれまでですが、最終的に利益を出していけるなら、数字を目標化する必要はないと考えていました。
なぜそうしていたかというと、数字ありきで経営していくと、数字合わせが始まるからです。例えば、「宿泊の新商品を月に一つ考える」という目標を立てたとしたら、商品の内容よりも商品を一つ増やすことに重点を置きすぎて、売れない商品を品ぞろえしかねません。また、ある人数を集めることを目標にしたら、安易な割引セールをして人数を確保しようとしがちです。どちらのケースも目標数字は達成できるかもしれませんが、利益はとれず最終的に会社はよくなりません。
では、私は前職でどうしていたのかというと、お客さまに喜んでいただけるという「価値」を前提(目標)にして、どうすればそれが実現できるのか、行動計画(プロセス)を明確に立て、その行動計画を実践していくことで売り上げを上げてきました。つまり「価値前提」の経営です。
「事実前提」の経営とは、目に見える目先の数字などの事実を前提に意思決定をする経営の仕方をいいますが、「価値前提」の経営とは、会社が大切にする価値観を実現するための経営の仕方をいいます。
私は、社員さんが安心して、いきいきと仕事をしたくなるような経営をしようと決めています。これが私の考える「価値」です。この「価値」を前提に経営すれば、社員さんは幸せになり、お客さまも幸せになり、ひいては会社の発展にもつながると思います。今でいうウェルビーイング(Well-being)経営です。数字は後から必ずついてきます。
宿泊業界では、まだまだ「事実前提」の経営が一般的なように思います。三翠園は、それとは少し違う「価値前提」の経営をしていきたいと思います。
一方、高知県にも素晴らしい価値があります。この価値を明確にして、同業他社さんと情報交換しながら、高知県の観光産業に貢献できたらいいなあとも考えています。