Q&A馬耳東風の上司に悩んでいます

今回のお悩み相談は、話を聞いてくれない上司についてです。
Q.再三再四、上司に要望を出したり、改善案を出したりしているのですが、聞き流されるか、全否定されています。私はどうしたらいいでしょうか?

A.そういう上司には「顔色を見て、ゴマを擦り、ご機嫌をとって」などとアドバイスする人がいます。また「辛抱、辛抱、サラリーマンの給料はがまん料だからがんばれ」などと言う人もいます。しかし、私はそんなことは言いません。
私は、入社したての頃、よく上司に「これおかしいやん」「絶対こうすべきじゃん」と、自分の意見を言っていました。しかし、何を言っても無視されるか、全否定され続けました。おもしろくなく、「頭にきた、ほんまに辞めたろうか!」と思うことも一度や二度ではありませんでした。しかし、私は創業社長の息子であり、やむにやまれず跡を継いだ母に代わって、早く社長にならなければいけなかったため、辞めたり逃げたりする選択肢はありませんでした。ですから相談者の気持ちはよくわかります。
それでは、私の経験を踏まえて、相談者ができうる対応を一つずつ考えてみたいと思います。
(1)きっちり反論する
本来なら、上司に否定されたら、「いや、これはこういう理由なので、こうやった方がメリットがあると思います」などと、きちんと根拠を挙げて反論すべきだと思います。最近、広島県安芸高田市の市長さんの発言が話題になっていますが、毅然(きぜん)とした態度で「すみませんが、それ全然答えになっていません」「おっしゃっている意味がわかりません」「あなたはこれまで何回も質問に答えてくださっていませんが、これはおかしくないですか」「先日も、私が質問したことについて、的確なご判断をいただけていません。ご判断できないようなら上司の方に聞いていただけませんか。無理なら私が上に伺います」などと反論して、意見を主張すべきです。しかし、それができるくらいなら私に相談をしていないと思いますので、次善策をご説明します。

(2)別の上司に相談する
その会社が組織として機能しているなら、その上司の上司に相談することも一案です。「こういうやり取りが続いています。もうどうにもがまんができません。私を配置換えするか、上司を異動させてください」と相談するのです。ただし、上司に報復される恐れがありますので、相談相手には、「ご相談するにあたって、まず私の身の安全を守ってください」と念押ししておきます。
もし、その相談相手が正義感の強い人なら「何、そんなことがあったのか、もちろん君の身は守るので、こうやってみたらどうだ。僕も力になるよ」などと、応援してくれることでしょう。しかし、残念ながらそのような上司がいるという話を聞いたことがありません。それに、相談者の会社にそういう人がいたなら、いい会社のはずですから、私に相談してくることはなかったと思います。
なぜこう言えるのかというと、多くの中小企業は人財難だからです。正義感が強く、課題解決力があって、上に意見をしっかり言えるような人はまれです。ほとんどの場合は、相談しても「いやいや、そう言われてもねえ」と、うやむやにして逃げるのがおちです。
ではどうしたらいいのかというと、私は、能力のない上司の下にいるほど不幸なことはないと思いますので、サッサと辞めるしかないと思います。「どうしたらその上司の態度を変えられるか」「どうしたらわかってもらえるのか」などと考えるだけ時間のムダです。そこは、あなたが活躍する場ではありません。価値観を共有できる上司や社長の下で働くのが一番いいと思います。

(3)転職する際の注意点
 さて、いざ転職するとなった際、また悪い会社に転職してしまわないように、確認しておいてほしいことがあります。それは雇用条件です。
「面接時に今後考えるからと言われたのに、いつまでたっても考えてもらえません」という話をよく聞きます。お給料はいくらなのか、残業代は全額支給されるのか、経費はどこまで認められるのか、など雇用条件については入社前にきちんとつめておくことが大事です。
 「そんなことを面接で聞いたら相手を怒らせてしまうのではないか?」と心配する人もいますが、労働基準法は、労働者を採用する際、労働条件を明示しなければならないと定めています(労働基準法第15条第1項、同法施行規則第5条)。ですから、あなたには尋ねる権利があるのです。
もし、面接時に雇用条件を聞かれて機嫌が悪くなるような経営者だったら、入社したらもっと機嫌が悪くなるでしょうから、そこは入らない方がいいと思います。私は、雇用条件を尋ねることで、いい会社かどうかがわかると思っています。
三翠園では、かつて辞めた社員さんが戻ってきてくれるようになってきましたが、私は面接時にあえてデメリットを全部話すようにしています。給料も「うちはここまでしか出せませんよ」「昇給もこれですよ」とハッキリ言います。あいまいなまま入社して「こんなはずではなかった」と思われたくないからです。それはお互いにとって不幸です。

(4)心の退職
人によっては、住宅ローンの問題とか、子どもの進学問題などがあって、そう簡単に転職できる状態ではない人もいるでしょう。その場合は、心の中で退職する方法もあります。
受け身でいたらメンタルをやられてしまいますので、「この上司は何を言ってもムダだから何も言わんどこう」「これからは言われたことしかやらん」と考えて、自分からスイッチを切るのです。当然、その間、仕事の成果は上がりませんが、能力のない上司なら早晩異動しますので、その時を待つのもいいでしょう。おかしな上司にへたにあらがうと報復人事をされかねません。何よりも大事なのは、あなたのメンタルです。「もういい」と割り切らないと心が壊れてしまいます。ここは「心の退職」をするか、私の会社にくるしかないと思います。

(5)記録に残すこと
さて、「心の退職」をする場合、ぜひお勧めしたいことがあります。それは全て記録に残すことです。大変面倒ですが、何月何日、何の件で上司と話したら、どんなことを言われたり、されたりしたのか、全部記録してください。
記録を取る理由の一つは、あなたのメンタルを守るためです。いくら能動的にスイッチを切ったからといっても、やられっぱなしでは、メンタルが壊れてしまいます。そこで、上司の無能さを書きとどめるノートなどをつくって、ひたすら書きとどめておいてください。その記録が10、20、100となってきたら、それを客観的に眺めてみてください。すると、なぜか愉快になるものです。これはやってみた人でないとわからないのですが、「あの上司はこんなにアホなんだ」ということを可視化することで、その上司を笑い飛ばすことができるようになります。
もう一つの理由は、上司のダメぶりが検証できますので、パワハラで上司を訴える場合に、それが証拠になるからです。全部記録に残しておけば、いつこういうことをされてメンタルをやられました、と言えるようになります。あまりにもひどい場合は、録音しておくのもいいと思います。

 厚生労働省によると、職場のパワーハラスメントとは、①「優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること」、②「業務の適正な範囲を超えて行われること」、③「身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること」のいずれも満たすものをいいます。
上司は、昔、自分がされてきたようなことをしたら、ほとんどアウトになると思った方がいいです。「給料をもらっているのだから、仕事はがまんして当たり前」という時代は昭和で終わりました。今、そんなことをしたら社員さんが流出するばかりか、会社はパワハラで訴えられてしまいます。
時代は「社員満足」から「社員幸福」を求める時代に移り変わっています。若い社員さんは、物質的な幸せよりも精神的な幸せを求めています。今回の相談者さんの会社は、時代の流れに対応できていないように思います。こういう社員幸福度の低い会社は自然淘汰(とうた)されていく会社です。その意味からも早く転職した方がいいと思います。
 幸福度の高い会社は、社員さんを大切にする会社です。社員さんの意見を傾聴し、社員さんが活躍できる場を用意する会社です。皆が自分たちの会社だと思える会社です。
ウエルビーイング経営をしていけば、口コミでうわさが広がっていきます。いい会社は求人なんか出さなくても人が集まるものです。私は、ウエルビーイング経営を推進して、三翠園を入社100人待ちになるくらい、誰もが憧れる会社にしたいと思っています。