お客さまはコンサルタント

私は社長になって、お客さまアンケートのフォーマットを3回変更しました。1回目は、質問項目の全面刷新です。既存のアンケートでは「お部屋はどうでしたか」「温泉はどうでしたか」「お料理はどうでしたか」「フロントの対応はどうでしたか」「接客態度はどうでしたか」などと、あらゆる項目について尋ねており、お客さまがどうしても言いたいことだけでなく、意識していなかったことまで無理やり聞き出してしまっていたように思います。端的にいうなら、誘導質問になっていて、雑音も増幅してしまったために、大切な本音が聞こえづらくなっていたのです。
雑音まみれのアンケートには、本音やそうでないものまでいろいろ書かれています。それらをすべて真に受けて対応しても、お客さまのニーズに応えたことにはなりません。そこで、アンケートのフォーマットを全面的に見直して、感想だけを書いてもらうようにしたのです。
しかし、ぬかったことに、三翠園をお選びいただいた理由について尋ねていなかったことに気づき、その質問を加えました。それが2回目の変更です。
その後、小さなバージョンアップを経て運用していたのですが、また致命的ともいえる質問項目がぬかっていたことに気づきました。それは、高知県においでになった理由を尋ねていなかったことです。こんな当たり前の情報を尋ねていなかったのです。それを加えたのが3回目です。
最近のアンケートを見ると、「NHK連続テレビ小説『らんまん』を見て高知に行ってみたくなった」というお客さまが圧倒的に多かったことがわかりました。ということは、上半期に三翠園のお客さまが増えた理由は、「らんまん」効果が大きかったということです。
旅館・ホテルの中には、後日、インターネットでご宿泊アンケートをお願いする方式を採っている会社もあります。その方式はお客さまにとって簡便で、会社にとっても集計しやすいのですが、私は絶対にそれはしないと決めています。アンケート用紙に手書きで書いていただくアナログ方式は、集計がとても大変ですが、中には細かな字でびっしり書いてくださるお客さまもいれば、イラスト入りで書いてくださるお客さまもいらっしゃいます。手書きのアンケートは、文字情報だけでなく感情という大切な情報も得られます。この感情情報こそが、お客さま感動を目指すサービス業にとって大切な情報だと思いますので、集計が大変ですがアナログでいこうと思っています。
実は、最近、さらにアンケートをバージョンアップさせ、お客さまに三翠園の魅力を高めるためのアイデアをちょうだいするようにしました。アンケート用紙に「革命賞(革命的なアイデアでわざわざそのためにご来館したくなるもの)には10万円、アイデア賞(斬新なアイデアで当館の選択肢に影響を得られるもの)には5万円、感謝賞(挑戦する価値があるもの)には3万円、びっくり賞(実現性はうすいですがよくぞこの様な発想が浮かびましたねというもの)には1万円差し上げます」と書いたところ、ものすごくアイデアが集まってきました。
新しいアイデアは思いつきです。思いつきは多いほど最幸です。アイデアがたくさん集まったら、企業理念を基準にして、みんなで選考し、似たアイデアを組み合わせるなどして磨き上げます。こうして実践できる有効な戦術が生まれます。
アイデアの段階では、収益を無視したものばかりです。それで構わないと思います。それを磨き上げていく段階で「どうやって収益につなげていくのか」を考えればいいのです。
お客さまは、お金を払って三翠園を利用してくださるありがたい人たちです。これほど頼りになる助言者(コンサルタント)はいません。今後、どんなアイデアをいただけるのか本当に楽しみです。
写真はカクテルの特訓中