Q&A部下が動いてくれません

今回の“あるあるお悩み”は、中小企業の経営者さんからの人材活用に関するお悩みです。
Q.私は小さな会社の社長をしていますが、社員さんが期待通りに動いてくれないのが悩みです。例えば、企画立案を全面的に任せても、意気に燃えるどころか、自発的・自主的に考えようとしてくれません。どうしたらいいでしょうか。
A.できない原因を相手の中に見いだそうとしても何も変わりません。「他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる」といいます。私なら自分にできることを考えます。
今回のお悩みは、社員さんが期待通りに動いてくれないということですが、あなたの指示の仕方が不十分だったのかもしれません。まずそこをチェックしてみてください。
これは私の悪い癖なのですが、どんなに新しい試みであっても、自分の頭の中に「イメージ」ができたら、その段階で「GO!」を出してしまう傾向があります。後からそれを聞かされた社員さんは、「また思いつきで勝手なことを言って!」と、よく眉をつり上げています。私の頭の中には道筋が描かれていますが、社員さんの頭の中には同じ道筋が描かれていません。ただ「後はよろしく」と言うだけでは、社員さんは何をどうしたらいいのかわからず、当然、フリーズしてしまいます。自分が描いた道筋を社員さんに細かく説明する必要があるのです。
などと偉そうなことを言っていますが、実は私もまだまだできておらず、先日も指示ミスから失敗をやらかしてしまいました。
それはこういう話でした。大雨の時に館内の通路がびしょぬれにならないように、私は、社員さんに「通路に防水カーテンをつけてください」と指示しました。ところが、届いたものを見ると、それは見事に私の頭の中に描いていたものとは全く違うものでした。
しかし、私はその社員さんに腹を立てませんでした。なぜなら、中途半端であいまいな指示をした自分に対して腹を立てるべきだからです。
では、どう指示すべきだったのかというと、「ここからここまで防水カーテンを取り付けてください」「このエリアは絶対に雨にぬれないようにしてください」と、相手が迷う余地がないくらい具体的に説明すべきでした。その上で「途中で確認したいので、○○する前に、私に報告してください」と言っていれば、プロセスチェックもできたはずです。そうすれば今回のミスは起こらなかったと思います。これはあいまいな指示をした私のミスです。ですから、責任者である私は自分の授業料として、カーテン代10万円を自腹で支払いました。

さて、今回のお悩みに話を戻します。部下が思ったように動いてくれない原因として、もう一つ考えられることがあります。それは、社員さんの能力に適した起用をしていなかったことです。人には得手不得手があります。経営者や管理者はそこを見定めて、確実に仕事を遂行できる能力を持つ人に仕事を任せるようにしないと仕事は回りません。
人材の起用を間違えたために、任せた仕事がうまくいかなかったということは、それは経営の人選ミスであり、経営の責任です。任された社員さんのせいではありません。
かつての私は、人に仕事を任せておきながら、期待通りの成果が挙げられないと、期待を裏切られたような気がして腹を立てていました。しかし、今になって考えてみると、その「期待」は、私が勝手に抱いたものであり、それを相手に押しつけていただけでした。
とはいえ、地方の中小企業は上場企業のように優秀な人材を豊富に擁しているわけではありません。現実問題としては、社長や上司がすべての仕事にある程度関わっていかなければ回らないと思います。ですから、細かなホウ・レン・ソウが大事になるのです。