社長ごとき
おかげさまで、「社長になんでもかんでも言ってきて」キャンペーンの成果が少しずつ表れてきました。数えたら80人を超える社員さんと、LINE、メッセンジャー、メールでやり取りができるようになりました。それは、助けを求める相談だったり、苦情だったりさまざまです。ここで詳しい内容をお話しすることはできませんが、親身に相談に乗らせていただいています。
相談に乗る際は、いつも「同僚などで同じように困っている人がいたら、『気軽に社長に連絡が取れるよ』『何でも相談できるよ』と話してあげてください」とお願いするようにしています。そうすることで、「少しでも相談してくれる人が増えたら」と思うからです。欲張りですが、最終的には全社員さんとつながりたいと思っています。
相談者の中には匿名の方もいらっしゃいます。ニックネームやアドレスしかわかりません。昨年来、LINEで相談を受けるようになったHさんもその1人でした。具体的な相談内容については、お墓まで持っていく約束になっていますのでお話しできませんが、本音でご意見を言っていただけるので、経営者としては非常にありがたく思っています。
しかし、匿名なのでお名前とお顔が一致しません。これでは通路などですれ違っても何も話ができません。なんとかしたいと思い、ある日、話の流れで「もしよろしければ、どこかでお声をかけてください」とお願いしてみました。すると、ついにその日がきたのです。
三翠園では、新型コロナウイルス対策として、毎朝検温を行っています。その点、タイムカードだけではないので、毎朝、お会いできた社員さんに、あいさつをすることができます。これはとてもありがたいことだと思いました。コロナ禍が終息しても、何かしらの制度をつくって、毎日、社員さんにあいさつができるようにしたいと考えています。
Hさんは、この検温の際に名前をカミングアウトしていただけました。どこかでお目に掛かったようにも思いますが、ゆっくり話をしたことがない方でした。
「私がHです」
「ああ、どうもどうも。これからも何でもおっしゃってください。身近に悩んでいる人がいたら『社長に相談したらいいよ』と言ってあげてください。絶対にうやむやにしませんから」
短い会話でしたが、ようやく私の思いを直接お伝えすることができました。改めて、「Hさんのように、相談してくれる人を1人でも増やしたい」そして、「何かあったら、いつでも相談に乗ってあげられる上司を1人でも増やしたい」という思いを強くしました。
これまで、三翠園には「上司に何を言っても取り合ってくれない」という空気がはびこっていました。早く払拭(ふっしょく)したいと思います。マイナスからのスタートは、見方を変えれば伸び代しかありません。
先日、あるゴルフ場に行った時のことです。私はキャディーさんと話をするのが大好きなので、この日もいろいろなことを話していました。話題は、このゴルフ場の改善点にも及びました。「ここ、こうしたらもっと良くなるよね。でも、僕らはお客さまやから直接は言いにくいので、キャディーさんから言っておいてよ」と話したところ、キャディーさんは慌てて首を振り、「いやいや、うちの会社はキャディーごときの話なんか絶対に聞いてくれませんので」と言うではありませんか。「キャディーごとき・・・」。私は、この言葉に大きなショックを受けました。キャディーさんの姿が、当社の社員さんと重なって見えたからです。
「残念やね。うちもそういうところがあるんよ。パートごときの話なんて聞いてくれんとかね。でも、この世に「ごとき」なんて言われる人はいないんだよね。もし、いるとしたら、それは社長ごときだけだよ」
この日は、最後に、キャディーさんと大笑いしました。