目指すべき姿へのアプローチ

会社には四つのタイプの人がいます。
①会社の価値観が共有でき、仕事の能力も高い人
②会社の価値観は共有できるが、仕事の能力が低い人
③会社の価値観は共有できないが、仕事の能力が高い人
④会社の価値観が共有できず、仕事の能力も低い人
④の人は、一緒に仕事をするのが難しい人です。③の人も困りものです。能力が高いので、会社の価値観と違うことを勝手にやりがちだからです。②の人は一緒に仕事をしたい人です。人間の能力というものは天才を除けば大して変わりはありません。経験を積んでいくうちに能力は自(おの)ずと高まっていきます。①の人は理想です。経営者としては、①のタイプの人だけをそろえたいところですが、それは非現実的です。組織や団体の構成員は「262の法則」(働きアリの法則)に従うからです。どういう理論かというと、組織や集団というものは、上位層2割、中間層6割、下位層2割で構成されるという理論です。①の人だけを採用したり、残したりしても、結局は2:6:2の割合に戻ってしまいます。
ということは、経営者がやるべきことは、①と②に共通する「価値観の共有」ができる人を増やすこととなります。
 私は、昨年、三翠園の社長に就任しました。社長が交代したということは、あるべき姿、つまり価値観が変わるということです。社員さんには、新しい価値観を共有してもらう必要があります。
しかし、私に、四国管財で試行錯誤をしながら培ってきた価値観があるように、社員さんたちにも長年経験し、つくりあげてきた価値観があります。いくら「今までの価値観より、新しい価値観の方がいいよ」と言ってもそう簡単には受け入れられません。それは受け入れない社員さんが悪いのではなく、他の優れた旅館やホテルで働いてきた経験がないのですから、自社と比較しようがないため、当然だと思います。
 ではどうしたらいいのかというと、自分たちが目指すべきホテル・旅館を見つけて、ベンチマーキングすることだと思います。ベンチマーキングとは、優れた他社の事例を基準(ベンチマーク)にして、自社と比較・分析し、改善すべき点を見いだす手法です。
 しかし、三翠園にはお金もベンチマーキングする時間的余裕もありません。それでも方法は無限にあります。私が長年お世話になっている株式会社ブロックスさんには、「DOIT!」というCS・ESの高い「いい会社」を徹底取材し、その経営をドキュメンタリー映像で紹介しているDVD教材があります。そのシリーズの中には、「加賀屋」さん、「ザ・リッツ・カールトン大阪」さん、「ほてる大橋」さん、「ホテル志戸平」さん、「株式会社王宮」さんの映像もあります。それを見るだけでも、目指すべき姿の勉強になると思います。

 今、全社員さんに実施したアンケートを取りまとめています。社員さんから見た三翠園のあるべき姿がそこに表われています。そこに先進的な取り組みをしている他社のあるべき姿を加味して、新しい価値観をつくっていきます。
新しい価値観ができたら、いよいよ研修です。明確にあるべき姿を伝えていきます。社員さんは、今までのあるべき姿から、バージョンアップした新しいあるべき姿に挑戦していかなければなりません。かなりギャップを感じる社員さんも多くいるでしょう。その社員さんの気持ちに、しっかり寄り添いながら、あるべき姿を一人ひとり丁寧に説明していきたいと思います。