聖なる夜(その1)
今年もクリスマスイブがきます。これまで、いろいろなクリスマスイブがありましたが、私にとって、どうしても忘れられないクリスマスイブがあります。
今から17年ほど前のことです。四国管財に中途入社してくれた33歳の男性がいました。彼は設備の仕事を希望しましたが、当時、設備の現場に欠員はありませんでした。
ところが、面接を担当した人は、「すごく目がきれいで、前向きな人がいます。家族のために何でもしたいと言っています。掃除の仕事は未経験ですが、熱い思いをもっているので、ぜひこの人を採用したい!」と言って私に迫りました。
当社は、志のある人、熱い人、大歓迎な会社です。それほど当社で働きたいと言ってくれている人を断る理由などありません。私は採用を決めました。彼には、当面、清掃の現場で働いてもらうことにしました。
しばらくたったある日、既存のお客さまを訪ねると、なんと設備の仕事の相談を受けました。話をお聞きすると、現在、依頼している会社の仕事ぶりに不満をいだいているとのことでした。「マンネリにやっていて、感じも悪い」とお怒りです。お客さまは「四国管財さんは、清掃業務でよくしてもらっているし、四国管財さんならきちんとやってくれると思って」とおっしゃいました。
とっさに彼の顔が思い浮かびました。彼は希望していない掃除の仕事にも真面目に取り組んでくれていました。「はい、大丈夫です。ちょうど適任者がいます。任せてください」。お客さまに即答しました。
私はお客さまとの面談を終えると、その足で彼に会いに行きました。「お疲れさま。今までやりたい仕事じゃないのにがんばってくれてありがとう。来月から希望していた設備の仕事をしてもらえるようになったよ。お給料も上がることになるから、ぜひがんばってね」。彼はすごくうれしそうでした。
彼は、新しい現場でも一生懸命に仕事をしてくれました。お客さまも大変な喜びようで、当社としても高い評価をいただきました。あまりの真面目な仕事ぶりに、あきれられ、お叱りを受けたくらいです。彼は、お客さまの社員さんの自転車修理まで引き受けていたのです。
それを知ったお客さまは、頼んだ社員さんに対して「そんなことまで四国管財さんにお願いしていたなんて、そこまで甘えたらダメやないの」と叱り、当社に対しても「あなたたちも、そこまでやらなくてもいいわよ」と、うれしそうに叱りました。褒められたのか、いさめられたのかわかりませんでした。人は、感動すると、怒っているのか、喜んでいるのかわからない不思議な表情をするものです。こうして、彼は、皆さんにかわいがってもらい、順調に仕事をしていました。
その数カ月後のことです。彼は通勤途中、前方不注意の自動車にはねられてしまいました。彼には、3人の小さなお子さんがいました。幼稚園児と小学生2人です。彼は意識不明の状態で病院に担ぎ込まれました。その夕方、奥さまと3人のお子さんが見守るなか、彼は33歳の若さでこの世を去りました。7月23日でした。
(その2へ続きます)