夢はかなう(その1)
私は、四国管財の社長を退いて会長になったのを機に、これからは新しい夢に挑戦し、さらに充実した人生を歩もうと思っていました。
そのような折り、「元気が出るセミナーがあるけど来ない?」というお誘いがありました。セミナーの主催者は、株式会社てっぺんを創業し、外食産業で働く人のプレゼンテーション大会「居酒屋甲子園」を創設した、講演家の大嶋啓介さんです。大嶋さんとは、起業家を支援するアントレプレナーセンターの福島正伸先生のご縁で知り合い、親しくしてもらっている仲間です。
大嶋さんは、何かのご縁で、阪神タイガースの矢野燿大監督と知り合ったようで、そのセミナーには矢野監督も参加されるとのことでした。矢野監督は読書家で、勉強熱心な方だとお聞きしていました。その矢野監督と一緒に勉強できると聞いて、1泊2日のセミナーへの参加を即決しました。
セミナーでは、「予祝」(前祝い)によって夢をかなえるやり方を学び、なんと私は矢野監督に予祝インタビューまでさせてもらいました。その中で、矢野監督にはとても共感するものがあり、一気に、矢野監督と阪神タイガースのファンになってしまいました。正直、それまで阪神ファンを「なんやねん」と思っていました。というのは、阪神ファンは、ヤジがひどいし、応援団は怖いし、気性も荒くけんかっ早いというイメージがあったからです。その私が、もう、コロッと矢野阪神ファンになってしまい、ファンクラブにも入ってしまったほどです。
1年後、福島先生と大嶋さんは、阪神タイガースのメンタルトレーニングにはいることになりました。大嶋さんから、「阪神タイガースの選手やコーチたちと勉強会をして交流するセミナーをするんだけど中澤さんも来る?」と誘われました。場所は甲子園球場です。夢のような話です。「ぜひ!」と即答しました。
セミナーでは、コーチ陣の人たちが矢野監督の価値観を実によく共有していることがわかりました。「選手に試合を楽しんでもらうためには、どうしたらいいのか」。真剣に話し合っていました。残念ながら、プロ野球の開幕がコロナ禍で変更になった関係で、勉強会は途中からZOOMになってしまいましたが、いろいろなコーチと接することができ、普段は見られない阪神タイガースの素顔を垣間見ることができました。
この話は、思わぬことから、四国管財の社員さんの夢の実現へとつながっていくことになります。
当社では、採用面接の際、「あなたの夢は何ですか?」と尋ねることにしています。会社のためではなく、自分や家族など大切な人の夢のために働いてほしいからです。入社した後も、機会があるたびに、夢について尋ねています。夢は変化しますから、フォローが必要です。
ある社員さんは、「私の夢は、子どもが甲子園に行くことです」と答えました。聞くと、その子は、高知商業高校の2年生でした。高知商業といえば、高橋善正、中西清起、中山裕章、岡林洋一、藤川球児といった蒼々(そうそう)たる投手たちをプロ野球界に送り出している名門校です。
私は、「それはすごいじゃない! 僕も、お子さんが甲子園に行けるように何か応援してあげるね」と言いました。その社員さん(お母さん)は「ありがとうございます」と言いました。これは後から聞いた話ですが、その時は、本気で社長が自分の子どものために何かしてくれるとは思っていなかったそうです。
「僕にできることは何だろう」と、あれやこれや考えてみました。ふと、大嶋さんが、高校野球部員のメンタルトレーニングに取り組んでいて、いろいろな学校で、神がかった実績をあげていることを思い出しました。そこで、ちょっとお願いしてみることにしました。
「大嶋さん、社員さんのお子さんが高知商業高校の野球部にいるんですが、何とかして甲子園に行かせてあげたいんです。すいませんが、ボランティアで応援してもらえませんか?」
「いいですよ。はい、任せてください!」
こうして、社員さんの夢は実現に向けて動き出したのです。
(その2に続きます)