社長からの祝電
私のお世話になっている方に1台の車を、ながーく乗り続けている方がいます。その車への愛情には頭が下がります。
かなりのビンテージ・カーですから、メーカーにも部品の在庫がありません。そこで、その方は車が壊れたときのために、同じ車をもう1台買って所有しています。その車は部品を取るために買った車ですから動きません。それぐらい車に対する愛が並々ではない方です。
その車は、ダイハツ工業のコンパーノ・ベルリーナ(1964-1969)です。親戚の方から譲り受けたとお聞きしました。私も車好きで結構いろいろな車種を知っていますが、さすがにその車は知りませんでした。それほどのビンテージ・カーです。
その方の家は、コンパーノ・ベルリーナのために設計したといってもいい家で、ガレージは人と話ができたり、お酒を飲んだりできるようになっています。日本経営品質賞を受賞(2002年度)されたネッツトヨタ南国(トヨタビスタ高知)の取締役相談役 横田英毅さんと、同じく同賞を受賞(2013年度)された滋賀ダイハツ販売の代表取締役会長 後藤敬一さんをお招きして、ガレージで乾杯したという逸話もあります。
ある時、コンパーノ・ベルリーナが誕生50年という節目を向かえるにあたり、その方の家で50周年のお祝いをしようということになりました。
それを聞いた私は何かサプライズができないか、ちょっと考えてみました。すぐに思いついたのは、コンパーノ・ベルリーナを模したケーキを贈るというサプライズです。
しかし、このようなことは誰でも考えそうなことです。他に何かもっと喜んでもらえるものはないか再考しました。ついに「これなら」というアイデアが浮かびました。それは、ダイハツ工業の社長さんからメッセージを贈っていただくというものです。これだったら最幸のおもてなしになります。
早速、私はダイハツ工業さんに電話をかけて、「こういう思いで御社の車を大切にしている人がいます。今度、その人のガレージで、車誕生50周年に合わせてパーティーを開くので、ぜひとも社長さんからメッセージをいただきたい」とお願いしました。普通に考えれば、四国の、それも素性も知らない者からの依頼が、上場企業の社長さんに届くわけもありません。
しかし、私はこれと似たパターンを、パズルを解くようにお願いしていって成功させたことがありますというか確率は100%です。それに味をしめていました。
今回、担当者さんからOKの返事をいただくまでに1カ月ほどかかりましたが、なんとか、50周年のお祝いの当日に社長さんから祝電を頂戴することができました。私は、そのサプライズの現場に参加したかったのですが、どうしても参加できない用事があり、それだけが悔やまれます。
さて、50周年のお祝いパーティーが開かれている会場に、ダイハツ工業の社長から電報が届きました。主役の方は、最初、高知ダイハツ販売の社長さんからの電報だと思ったようでした。しかし、電報を読み上げた人が改めて「ダイハツ工業の社長」と言ったのを聞いて、「何?ダイハツ工業?」と仰天したそうです。
ダイハツ工業の社長さんからの祝電は、「弊社の車を50年間も大切に乗ってくださって、ありがとうございます」とその方の愛車精神を称賛するものでした。
サプライズは成功し、50周年記念パーティーに花を添えることができました。こうして、私も、最幸の喜びを味わえたのです。
この様なサプライズは大好きです。我が三翠園には色んな記念日をと態々ご予約頂ける方が沢山おいでます。まだ何も仕掛けができていませんが西田文郎さんが創った造語「他喜力の」血が騒ぎます。