愛のスカイライン
私は、若い頃、車へのあこがれを強くもっていました。高校生の時には、早く車の免許を取りたくて、居ても立っても居られないくらいでした。時代がそうだったのだと思います。周りの友人たちも車やバイクに夢中で、話題といえば車やバイクでした。
当時、透明なカードケース(写真などをはさめる下敷き)が流行していました。皆、アイドルの写真や、映画のスターの写真などを切り抜いて下敷きに挟んでいました。私は、大好きな車の写真を挟んでいたことを覚えています。今にして思えば、それは、ちょうどいい自己表現の手段だったのでしょう。
私が小学校の高学年から中学生にかけて、大流行したCMがありました。1972年に登場した4代目スカイライン、「ケンとメリーのスカイライ」(通称ケンメリ)のCMです。ケンとメリーがスカイラインに乗り、日本各地を旅するCMは社会現象を引き起こし、そのCMソングも大ヒットしました。
ミーハーな私は、そのCMにすっかり感化されました。しかも、親戚のおじさんが、ケンメリに乗っていて、私も一度乗せてもらったことがあります。あまりの格好良さに、「車に乗るなら4代目スカイライン」と固く心に決めました。しかし、私が免許を取った時には、生産が終了しており、中古車しかありません。
私は、中古の白いスカイライン4ドア車(通称ケンメリの四枚)を必死に探しました。その時のことはよく覚えています。母は車の免許をもっていませんでしたので、タクシーで中古車屋さんを回りました。
一つ、非常に記憶に残ったやり取りがあります。それはある中古車屋さんでした。無駄足になるといけないので、まず電話で「4代目スカイラインの白はありますか?」と確認するようにしていましたが、その中古車屋さんは「あります」と言いました。私たちは、遠路はるばる行ってみたのですが、白がありません。怒って「これ白じゃないよね!」と言うと、平然と「いや塗り替えれば白になりますから」と言い返されました。そんなお金はありません!
ずっと探していくうちに、ディーラーの中古車部門に行き着き、そこで白のスカイライン2000GTX4ドアを見つけました。値段は予算オーバーでしたが、母に懇願して、出世払いということで購入しました。
ところが、その車は排出ガス規制対策でNAPS(日産公害防止システム)を導入した車だったのです。NAPSとは、排ガス対策として触媒方式を採用したもので、燃費の悪化や「牙を抜かれた」と称されたように著しいパワー不足に陥っていました。いつぞや高知の「北山スカイライン」を愛のスカイラインで走った時は、軽自動車に追い抜かれてショックでした。それぐらい坂道は上れません。時速100キロは出せましたが、その車はステアリングのバランスが悪く、スピードを出すとガタガタ揺れて怖くなりました。
それでも、あこがれの白のケンメリでしたから、なんだかんだあっても、ホイールを替えたり、テールランプの色も自分で塗り替えたりするなど、いろいろ工夫して結構楽しんだものです。
ホテル業も、私がずっとあこがれてきた仕事の一つです。コロナ禍というこれ以上ない逆風下での社長就任でしたが、カイゼンに喜々として社内の素敵な皆さん取り組んでいる自分を感じます。