変革する勇気
高知県には「おきゃく」という食文化があります。「おきゃく」とは宴席のことで、高知県人は、何かにつけて宴会をするのが大好きです。その「おきゃく」に欠かせない料理が「皿鉢料理」です。昔は、私の家でも、お正月になると親戚、友人などが集まり大宴会が行われ、その席では皿鉢料理が振る舞われていました。今でも家の倉庫には、恐ろしいほどの数の宴会セットがしまってあります。
しかし、時代の変化か、以前に比べて大人数で集まることが少なくなり、皿鉢料理を食べる機会も減ってきたように思います。
地元のザ クラウンパレス新阪急高知さんに勤めていた友人から聞いた話によると、かつて高知には「おせち文化」というものがなかったそうです。高知には皿鉢料理という食文化が残っていたからです。
当然、ホテルが「おせち料理」を作ることもありませんでした。しかし、そのシェフは、お客さまの嗜好(しこう)が変わってきたことを感じ取り、いち早く「おせち料理」を出すべきだと提唱しました。
しかし、簡単にはいきませんでした。「皿鉢料理を食べる文化があるのだから絶対に無理だ」と猛反対にあったのです。それでもそのシェフは諦めず、ついにはおせち料理をお出しすることができたそうです。
今では、皿鉢料理と並んで、おせち料理も高知では人気のメニューとなっています。
わが三翠園には自慢のおせち料理があります。今回、おせち料理とその態勢の見直しのために、何種類もおせち料理を食べてみたのですが、お世辞抜きでどれも本当においしいのです。聞けば、三翠園のおせち料理は、自社で手作りしているとのことでした。
現在、人手不足やさまざまな事情から、おせち料理を自社で作っているホテルはあまりなく、多くは県外の大手専門会社にアウトソーシングをしているそうです。おせち料理を注文したお客さまは、冷凍のおせち料理を受け取り、家で解凍して召し上がるスタイルが主流となっています。
わが三翠園には、数少ない手作りのおせち料理があります。これは非常に強いコンテンツです。有り難いことです。
しかし、その強みにあぐらをかいているわけにはいきません。商品構成、配達方法、決済方法など、見直す点は多々あります。勇気をもって変革していこうと思っています。
例えば、配達方法ですが、これまでは大みそかに社員さんが100軒以上配達していました。しかし、温暖化が進むなかで、いくら車内をクーラーでキンキンに冷やしているとはいえ、社員さんが配って回るやり方でいいのか疑問です。
お客さまとの代金決済も見直しが必要です。これまでは、ほとんどが現金決済だったそうです。大みそかに現金を集めて回るのですから、それを受け取った経理の締めは12時になります。そこからの作業もありますので、経理と総務は未明まで働きヘロヘロになって帰宅していたそうです。なんとも驚きのガラパゴス状態でした。
今は、さまざまな電子決済が普及しています。ホームページやカタログのQRコードを読み込んだら、発注と決済ができる仕組みにだってできます。工夫することで、社員さんはもっと幸せになれます。勇気をもって、さまざまな改革を推し進めたいと思っています。