気になる意思決定
経営は変化への対応であり、その観点から「経営とは意思決定である」といえます。よって、よい経営とは意思決定が迅速になされる経営であり、悪い経営とは意思決定が滞る経営です。
私は、前職(四国管財)の時から意思決定はとにかく早くするように心がけてきました。社員さんからのメールで、お見積もり内容が確認できたら、どんどん押印・見積書発行の指示を出していました。こうした意思決定を1日に何十回もしてきました。
私が着任した当時、三翠園では意思決定のあり方に問題がありました。
まず会議の位置づけです。最初に気になったのは、決めなければいけない問題があっても、それを会議の場まで持ち越していたことです。会議は意思決定のゴールではありません。会議は意思決定のための手段にすぎないのです。意思決定は稟議(りんぎ)を回せばいいのであって、会議を経なければ意思決定できないというわけではありません。そんなことをしていたら機会損失になります。現在、会議に依存した意思決定のあり方を大きく見直して、LINEを活用することでほぼ24時間以内に案件の諾否を出せる仕組みにしました。まあそれでもまだ遅すぎますが・・・
次に会議の仕方が気になりました。これまでの会議は、前回の議事録を見ながら、積み残した案件のおさらいから始まることもざらでした。間が空いてしまい、議論の内容を忘れてしまっているからです。そのようなことが繰り返されていました。こんな時間のムダはありません。
これについては、システム開発部の馬渕君が復帰してくれたおかげで大幅に改善できました。意見や質問があれば事前に書き込めるようになったため、会議は参加者全員で議論すべきことに集中できるようになり、月1回の幹部会もほぼ1時間もかからないで終わるようになりました。まあ案件はあれば思いついたときに言ってもらえばいいだけで詳しい資料を作る時間も勿体ないです。着任当時は恐ろしいほどの資料を作成して中身がもっと恐ろしいぐらい内容もありましたが意味がありません
そして、なんといっても意思決定できない会議の進め方に疑問を持ちました。会議で議論しても、決められないまま先送りされるケースが散見されたのです。やるか・やらないかを明確に決めて、やるなら直ちにやるようにしないとチャンスを逸してしまいます。
意思決定できない原因としては情報不足が挙げられます。しかし、情報が足りないなら、事前に調べておけばいいだけだと思います。それをしなかった背景には、決められなければ保留にして、次回の会議に決めればいいという安易な考えがあったように思います。しかし、そんなことをしていたら経営のスピードはどんどん遅くなってしまいます。
会議までに必要な情報はできる限りそろえ、会議ではそれをベースに幹部でとことん議論すればいいと思います。せっかく最高幹部が顔をそろえているのですから、やったときのメリット・デメリット、やらなかったときのメリット・デメリットを出し合って、なんとしても会議の場で最善策をひねり出すべきだと思います。たとえベストな策ではなかったとしても、それが、現時点における会社の実力ですから仕方がありません。
大事なことは、安易に保留に逃げず、「決める」こと。そして「やってみる」ことです。やってみて、うまくいかなかったら修正してまたやればいいと思います。決断・実行・修正のプロセスを数多く経験することで、組織に力がつきます。学習能力も高まります。
ここからは、意思決定において私が留意している点についてお話しします。
意思決定は迅速に行うことが肝要ですが、そうかといって社長が独断専行ですればいいわけではありません。社長が独断専行で決めてしまうと組織が成熟しないからです。
三翠園の意思決定できる人は5人しかいません。必ずしも相対の意思確認にこだわらず、ツールを工夫すればいいのです。そうすれば、5人の意思確認にたいして時間はかかりません。組織力を高める上でも、ここは丁寧に行いたいと思っています。
ただこの5人が独断で行うのでなく現場の意見の代表者的存在です。
これも意思決定のスピードに関することですが、社長が真っ先に意思決定してしまうと、他の幹部や役員が引っ張られてしまいますので、あえて自分の意見は最後に言うようにしています。
意思決定の場は合意形成の場であり、多様な価値観や考えを持つ幹部や役員がコミュニケーションを取りながら答えを探す場でもあります。いうならば化学反応が起きる場です。「三人寄れば文殊の知恵」とか「三人寄れば師匠の出来」といいますが、みんなで知恵を出すから正解に近づけます。一人では思いつかないアイデアも生まれます。組織の成長のためにも、社長の意思決定は早ければ早いほどいいとはかぎらないということです。
もう一つ留意していることは、意思決定をしたら、それで終わりにしないということです。意思決定だけで物事が進むわけではありません。例えば、企画の実現には二つのステップが必要です。意思決定とそれを行うための調整です。まず、やるか・やらないかの意思決定です。やると決めたら、次はそれを実行するための調整が必要です。組織で行う以上、何事も関連部署との連携が必要となります。この調整が一番大変です。
調整がうまくいかないと、たとえその企画が実現できたとしても、いびつな1回きりの打ち上げ花火に散ってしまいます。持続可能にするためには、横断的な部署の連携が必要です。一番それができるのは役員や社長だと思います。
ですから役員や社長は、意思決定をしたら「後はやっとけ」と任すのではなく、1件1件調整をフォローしてあげることが大事です。どんなに忙しくても、同時に案件が100件もあるわけではないので、そこは担当者と一緒になって考えていくように心がけたいと思います。
中小企業では、こういう意思決定のパターンも一つのビジネスモデルとして、ありなのではないかと思っています。