運営と経営

先般、待ちに待った「第73回高知市納涼花火大会」が開催されました。準備万端とはいえませんが、それなりにみんなで準備をして、手ぐすね引いて待っていた花火です。
花火大会は三翠園にとっても大きなイベントであり、昨年も、社員総出で夜遅くまで頑張りました。一方、経営的に事業を評価すると、頑張った割に利益が大して出ておらず、「利益なき繁忙」であったといえます。なんとももったいない話です。 
三翠園の経営上の課題は、売上偏重の是正です。花火大会は氷山の一角に過ぎません。私は就任以来、最優先すべき取り組み事項として「利益重視」を掲げ、日々、カイゼンに取り組んできました。
今年は、花火大会が行われる日のお部屋料金を見直しました。昨年までは、花火が目の前で観られるという高付加価値があるにも関わらず、その価値を料金に反映できていなかったと思います。ありていにいえば安すぎたのです。
ただし、花火大会には天候というリスクがあります。もし荒天延期となれば、割増料金のお部屋代を頂戴するわけにはいきません。そこで、救済措置として、「花火大会が荒天延期となった場合は料金を半額にします」という設定にしました。ところが、これがあだになってしまいました。
これは、私がずっと後になって知ったことですが、「花火大会が荒天延期となった場合は料金を半額にします」という表記は、大手旅行サイトに記載してもらえず、やむなく三翠園のホームページだけで花火大会観覧特別企画を販売することにしたようでした。三翠園のホームページと大手旅行サイトとでは、訴求力に雲泥の差があります。結果、せっかくの目玉企画にもかかわらず予約でお部屋を満室にすることができませんでした。
まさか、大手旅行サイトと連携できていなかったとは・・・。私がそのことを知ったのは、大会まで1カ月を切った日のことでした。もっと前にホウ・レン・ソウしてくれていたら打つ手はあったでしょうが、時すでに遅しです。

さて、今年の花火大会は、当初、8月9日 (水)の開催予定でしたが、荒天のため13日に延期となりました。しかし、ここでももったいないことが起こりました。延期になったときの対策が何も練られていなかったのです。13日は通常のお盆料金になっており、その日に来館されたお客さまは「ラッキー」と、大喜びでした。これって、大事な商機を逃している気がしてなりません。まだまだ、「利益重視」の意識が徹底できていないと思いました。
一方、延期によって「アンラッキー」になったお客さまもいらっしゃいます。この方たちへの対策も練られていませんでした。割増料金でご予約いただいたありがたいお客さまです。何もしないわけにはいきません。そこで、荒天延期となった9日に予約してくださった方については、延期開催日の13日にホテルの屋上にご招待し、その特設席から花火をご観覧いただくことにしました。急なお声かけでしたが、約70名のお客さまに楽しんでいただけました。
実は、ホテルの屋上での観覧については、昨年も実施しました。本来、花火が観られない北側のお部屋を「ホテルの屋上から花火が観られます」という触れ込みで集客したのです。ところが、お客さまをご案内した場所は旧館の屋上だったため、新館の陰に隠れて100%花火が観られず、大変なお叱りを受けることとなりました。
それに懲りたのか、今年は屋上の利用については「何もしない戦略」を考えていました。しかし、これは戦略でもなんでもなく、「何もしないだけ」だと思います。
そこで、今年は、旧館の屋上を社員さんとそのご家族に開放することにしました。ホテルの屋上を社員さんの福利厚生に使ったのは、会社創立以来初めてではないでしょうか。結果、50人ほどのご家族にご観覧いただけたようです。
ただ、せっかく三翠園に来ていただいたのですから、何かもっとサプライズとか、できることがあったように思います。これについても、事前にしっかり企画を練っておけばよかったと反省しています。

なかなかカイゼンが進まない理由は、「前はこうだった」「前の役員はこう言った」というあしき前例主義が染みついていたことにあります。散々これに振り回されてきましたが、だいぶ前例主義は少なくなってきたように思います。しかし、まだ変化に対応できていない人もいます。
日々、お客さまと接する部署は、お客さまの声をお聴きできますので、どうしなければいけないかは自(おの)ずとわかります。しかし、お客さまの声が届かない部署は、いまだに「前はこうだった」から、なかなか脱却できずにいます。この「前はこうだった」を「前はこうだったが、今はこうしたい」に変えるのも、経営者としての私の仕事です。
「運営」と「経営」は明確に違います。経営とは、組織を運営していくことではなく、常に変化し続け、企業価値を高めていくことだと思います。私は、「経営」を社員さんと一緒になってやっていきたいと思っています。ありがたいことに、日々、協力してくださる社員さんは確実に増えています。
経営者が一人で頑張ってもしょせん無力です。「いい会社にしていきたい」という同じ価値観を持った仲間たちと「経営」していけば、確実に会社は良くなっていきます。そして、その結果、利益も出てきます。
今朝、旅行サイトに書かれていた三翠園の口コミを見たら、今までにない点数が付けられていました。この点数に一喜一憂する気はありませんが、今まで見たことがない点数で、しかも評価の内容が、私が目指してきた戦略と合致するものでした。立地条件とか三翠園の歴史的価値といったものは、先輩たちのおかげであって、自分たちの努力が反映されたものではありません。一方、「社員さんが親切」「社員さんの対応が素晴らしい」といった評価は、自分たちで勝ち取った結果ですから、正直、うれしかったです。これからも、こうした評価をいただける「経営」を続けていきたいと思います。