料金改定のお願い
先日、私が昔からお世話になっているお客さまから、心配してくださるご連絡が入りました。それは、「私の知り合いが三翠園さんに、昼の会議で使いたいという予約を入れたんだが、けんもほろろの応対で断られたらしい。中澤君らしくないけど大丈夫なの? 中澤君のやっているお客さま満足とちょっと方向性が違うんじゃないかな。ひょっとして中澤君はこのことを知らないんじゃないの?」というありがたいご連絡でした。
私にはその件に関しての記憶がなかったので、すぐに現場に確認してみました。すると、「お客さまが希望する金額と、当社がご提供できる価格にかなりの乖離(かいり)があったため、丁重にお断りした」ということがわかりました。案の定でした。早速、お客さまに連絡を取り、次のようにお話ししました。
「この度は、わたくしどもの説明不足で大変ご心配をおかけいたしました。申し訳ございません。昔の三翠園でしたら『この予算でやってほしい』と頼まれたら、二つ返事でお受けできたかもしれませんが、現在、コロナ禍もあいまって経営が大変厳しくなっている状態です。正直申し上げて、採算度外視でお引き受けする余裕はまったくありません。そこで、大変恐縮ではございますが、お引き受けできない案件につきましては、勇気を持ってお断りさせていただいている次第です」
このようにおわびとご説明をさせていただいたところ、「ああ、そういうことだったんだね」とご理解いただけました。
私は、社長に就任して以来、料金問題に関して対策に苦慮してきました。ブライダルや宿泊料金については、「こういう料金になります」と、ご提示すればすみますが、地元宴会については長いお取引の歴史があり、料金を一方的に改定することが難しいのです。しかし、料金を改定しなければ経営が成り立たないことは自明の理でした。
そこで、当社の営業担当を通じて、1年かけてお客さまに料金改定のご相談をさせていただいてきました。交渉は案の定大変難航しました。「以前の三翠園さんなら受けてくれたのに」「これまでも無理を聞いてくれたのに」。こうした「前はこうだった」というご意見が、壁となり私たちの前に大きく立ちはだかりました。「コロナ禍前に約束していたはずや! 延期、延期でようやく宴会ができるようになったんだから、約束した値段でやってくれ」とおっしゃるお客さまもいらっしゃいました。
いくら経営が厳しいといっても、こちらの都合だけを押しつけることはできません。そういう場合はやむなく「それでは今回だけは、そのお値段でお引き受けいたしますが、次回からはよろしくお願いいたします」と申し上げて、泣く泣くお引き受けしてきました。
料金改定をお願いしてから1年がたちました。今回ご連絡を受けた案件についても、昔の金額でお受けすることはできません。それをしたら、料金改定に応じてくださったお客さまに対して説明ができないからです。ここはお叱りを受けてもご理解いただけるように説明を尽くすしかありません。
実は、これまでどうしてもご理解いただけず、かつやむを得ない場合は、私が差額分を自腹で補てんしてお引き受けしてきました。毎月、おっそろしいほどの持ち出しになっています。しかし、これにも限界があります。私も幸せになれませんから、お叱りを受けながらきっちりやっていくしかありません。
三翠園にベンチマーキングなどでご来館してくださる方についても、全て正規の料金をいただいています。どうしても料金をいただけないような場合は、正規の利用料を私が三翠園に支払ってきました。社員さんとの飲み会もそうです。先般、オリジナルカクテルの披露会を開催しましたが、その費用も全部自腹です。私は、うまくいくしかないと思っていますが、実際、どうなるかはわからないからです。絶対に、三翠園に迷惑をかけることはできません。私は社長として三翠園を守らなければいけないのです。公私混同はしませんが私公混同はありというか今の時期は絶対必要だと思っています。