注文がいらないお寿司屋さん

私の母は、高齢による骨粗しょう症のために骨の強度が低下して、「いつの間にか骨折」するようになってしまいました。自足歩行が困難で介護が必要ですが、私も妻も働いているため、24時間の介護はできません。介護してくれる方を雇ってお世話してもらうことも考えたのですが、年中無休の24時間介護は困難です。幸い、知り合いの高齢者施設に入居できることとなり、今はその施設に入っています。
家にいた時は、裁縫が得意だったので、よくキーホルダーづくりをしていました。人に喜んでもらえたので、生きがいだったようです。このキーホルダーづくりは、手先を使うため、認知症予防の観点からもよかったのですが、1人で座れなくなってしまったため、大好きなキーホルダーづくりもできなくなってしまいました。今は、半分寝たきりで、高齢者施設のお世話になっています。
しかし、困ったことがありました。母は施設の料理が口に合わず、「食べたくない」と言って、全く食事を受け付けてくれません。非常に困った状態になりました。どうしたかというと、家でつくった料理を持って行ったり、スーパーや外食レストランで買った料理を届けたりするようにしました。
幸い、この施設は三翠園から徒歩1分の距離にありますので私が行けます。さすがに朝は行けませんが、昼と夜は私が食事を届けるようにしています。どうしても私が行けないときは、姉やおいっ子に頼みました。なんとか交代して行くようにしています。それでも行けない場合は、施設の人にお願いするしかありませんが、できるだけ調整して誰かしらが行くようにしています。

母が一番喜んでくれる料理は、「天天丸」という回転寿司屋さんのお寿司です。高知にはレベルが高い回転寿司屋さんがいろいろありますが、この「天天丸」さんは母のお気に入りで、ネタも非常に新鮮でおいしいです。
母は、食が細いので、量は食べられませんが、サビ抜きのマグロ握りと、ウナギを1皿ずつ、合計4貫いただきます。それでおなかいっぱいになります。母が歩けたころは、よく食べに連れて行ってあげたものです。
今は、三翠園の近くに天天丸さんの土佐道路店がありますので、マグロとウナギを1皿ずつ注文して、テークアウトしています。2皿しか注文しない客は非常に珍しく、しかもこの半年間ほぼ毎日通っていますので、すっかり覚えていただけたようで、今では、私の車が見えると、注文しなくてもつくり始めてくれます。私が店に入ってレジで注文した時は、すでに用意ができており、私は594円を支払うだけです。
ふと店内を見ると、人で賑(にぎ)わっています。こんなに忙しいのに、たった2皿の客を優先してくださるその気遣いがうれしくて、毎回泣きそうになります。
いろいろ大変ではありますが、このおかげで、母が家にいた時よりも、母と一緒に食事をする機会が多くなりました。非常にありがたいことです。しかも、母が食べない施設の食事は、私が食べていますので、栄養のバランスが取れて、私にとっても最高になっています。