スマイルサポーター
ありがたいことに、気がついたことを自主的に改善してくださるグループが増えてきました。そのような中、あるグループは自分たちのグループ名も変えようとしていました。そのグループとは「日勤」さんです。通常、組織名は仕事内容を表す名称が付けられます。しかし、「日勤」さんは仕事内容と関係ない名前で、実をいうと、私も違和感を抱いていました。
「日勤」さんグループは、パート・アルバイトスタッフさんで構成されており、仕事内容は、お掃除をした後のチェック、部屋の備品の補充、部屋の傷や器具の故障のチェックといった「客室清掃」グループのサポートから、チェックインしたお客さまのお部屋へのご案内、さらには他の部門の人員が足らない時は、お布団上げも手伝うなど、さまざまな業務をサポートしてくださっています。
「日勤」さんグループは、会社の経営理念や行動指針が書かれたクレドの勉強会もいち早く立ち上げてくださるなど、日々、業務の改善に努めてこられました。その「日勤」さんグループから「グループ名を変えたい」という相談を受けたのです。「どんな名前にしたらいいでしょうか?」と尋ねられましたが、「名前は自分たちで決めてください」と答えました。せっかく自分たちの意志で名前を変えようとしているのに、社長の私が「これがいいんじゃないの」と無粋なことを言ってしまったら、みんなが幸せになれないからです。
すると、三つほど候補を挙げてきて、「この中から社長が決めてください」と言いました。私は、その候補名を見て驚きました。私だったら絶対にこの名前にしたい、という名前があったからです。それは「スマイルサポート」でした。「私ならスマイルサポートかな」と答え、新グループ名は「スマイルサポート」になりました。いつも笑顔で、いろいろな部門を横断的にサポートしていく、まさしく彼女たちのしている仕事を表す名前だと思いました。
この名前に決まって、彼女たち以上に喜んだのは私でした。もう万歳三唱したい気持ちでした。というのは、この名称には大変思い入れがあったからでした。
前職では、情報のハブ機能を担う組織がありました。「事務グループ」です。ここにはラッキーコールはもちろん、すべての情報がホウ・レン・ソウによって集められ、一元管理・共有されていました。ある時、「事務グループ」という名称を変更することになりました。クレームの連絡、困ったことの相談、とりとめのないグチ、不安、悩み、など何でも気軽に連絡していただくためには、もっと楽しそうな名前にしたいと思ったからでした。新名称は社内公募しました。その結果、決まったのが「スマイルサポーター」でした。笑顔でお客さまや社員さんをサポートする部署にふさわしい名前でした。今から21年前の話です。今回、くしくも「スマイルサポート」という名前が候補に挙がっていたので、私は大変うれしく思ったのです。
前職の「スマイルサポーター」については、2021年に発刊した拙著『かかわる人をしあわせにするお掃除会社 本気のクレーム対応と魔法のホウ・レン・ソウ』に詳しく書いてあります。この本は、なんと偶然にも、私の誕生日に発刊されました。一生忘れられない本となりました。
発刊当時、三翠園でも「出入り業者の社長さんが本を書いたらしい」ということで少しだけ話題になりましたが、経営幹部の方には全く関心を持っていただけなかったようで、社長就任時、その話題が出ることは一切ありませんでした。私としては、自分の経営方針を理解していただくためにも、みなさんに本をプレゼントして、ぜひ読んでいただきたいと思いましたが、まさか「もしよろしければ本を差し上げますけれど、いりますか?」とは聞けません。社長からそう言われて「いや、いりません」とは言えないからです。強要はしたくありませんでした。あくまでも「読みたい」という人には差し上げるつもりでした。
会社の広告宣伝として、ひっそり売店で拙著を販売していましたが、意外なことに結構売れているようです。中には、売店で本を見て「買います」と言ってくださる社員さんもいましたが、その方には「いやいや、私がプレゼントするから買わんでええから」と言いました。
「日勤」さんグループの人たちは、拙著の存在を知りませんでした。今回の件で、本のことを知ったそうです。「読んでみたいです」と言ってくださったので、「無理して読まんとってね」と前置きをした上で、本をプレゼントいたしました。
その数日後、本を読んだ人が、申し訳なさそうに「なんかスマイルサポーターという名前をマネしたような形になってしまい、すみませんでした」と謝ってきました。
私が、「いやいや、私はグループの名称について自分からは何もアイデアを出さなかったでしょ。それは、みなさんに好きに決めていただきたいと思ったからです。偶然、スマイルサポートという名前を見て驚きました。前職ではスマイルサポーターでしたが、みなさんがスマイルサポートがいいと思ったのなら、それでいいと思いましたよ」と言うと、「いいえ、あの時は間違えました。私たちもスマイルサポーターがいいと思います。なぜなら、私たちは笑顔でみんなをサポートするスマイルサポーターだからです」と言ってくださいました。思いが通じ合いました。これほどうれしいことはありません。
今日も、スマイルサポーターのみなさんは、三翠園で活躍してくださっています。