もったいないゆず湯
当社には奇妙なマーケティングがあります。それは、マーケティングというより、昔から受け継がれてきた伝統的な行動様式のようなものです。
例えば、毎年、冬至が近づくと懇意にしてくださっているJAさんから、たくさんのゆずを頂戴しています。それを使って、お客さまにゆず湯をお楽しみいただいています。
ゆず湯は、血行促進、美肌、ダイエット、リラクセーション、保湿、かぜの緩和、などの効果が期待でき、なにより爽やかないい香りが楽しめます。お客さまには、大変喜んでいただけていると思います。
毎年、テレビのニュース番組にも取り上げていただいているため、一見すると、イベントとして大成功のように思われますが、ほとんど集客効果に結びついていないのが実態です。
なぜかというと、当社は、事前に宣伝をしてこなかったからです。それなら、どうしてテレビの取材がくるのかというと、ゆずを提供してくださっているJAさんが、「ゆずをご提供した三翠園さんでは、今年も冬至にゆず湯を行います」というニュースリリースを発信してくださっているからでした。
テレビは、ゆず湯の映像を撮って、当日に流します。それを見た視聴者さんは、「ふーん、今年もやったんだ」と、追認して終わりです。本来なら、他の旅館さんがホームページ等で「今年もやります!冬至のゆず湯」などと展開しているように、いろいろな媒体を使って、事前に十分な告知をすべきです。そうしないと集客ができないからです。
「それなら、テレビ放映の後、1週間くらいゆず湯イベントを続けたらいいじゃないか」と思われるかもしれませんが、そうもいかないのです。旅館のお風呂は衛生管理を徹底しなければいけませんから、週に何度も清掃し、お湯を入れ替えることになっています。ですから、ゆず湯を続けることは、現実的に難しいのです。
もう一つ例を挙げます。毎年、「高知市納涼花火大会」の日になると、当たり前のように、テントを張って、当たり前のようにバリケードを設けていました「どうしてこんなことをしているの?」と聞くと、花火大会に来られた人がお庭から間違って三翠園に入り込まないようにするためだといいます。しかし、「なぜ三翠園に入って来られたら困るの?」と聞くと、納得できる答えは返ってきません。恐らく、「昔からやっていたから」というだけで、必要性について詰めた議論がなされてこなかったのだと思います。
結論として、謎のテントについては、取りやめにしました。お願いしてきた業者さんには申し訳ありませんが、経営再建中の当社は必要なものにしかお金を使えないからです。不要な経費を見直していかなければ、利益が出る経営体質には変えられません。
かつて、花火大会になると、お客さまを集められるだけ集めようとしたため、「最高で、3千人ぐらいのお客さまを集客したことがあるんや!」という武勇伝(?)を聞いたことがあります。さぞ大忙しだったことと思います。しかし、それでどれだけの利益が上がったのかというと、クエスチョンマークが飛び交います。おっそろしいコストをかけて、おっそろしい人員を動員して、おっそろしい時間をかけて午前さまになるほど働いて、それで利益がほとんど出ていないなんて、もはや喜劇です。なぜ、誰も原価と利益について考えようとしないのか、非常に不思議でなりません。
謎の慣習(伝統的な行動様式)は、全て見直して、どんどん当たり前のマーケティングに変えていこうと思います。