共通する社員さんの悩み
私は、本業にいそしむ傍ら、事例発表活動にも精を出しています。つたない私の経験ですが、少しでも社会のお役に立てればと思うからです。ありがたいことに、こんな私の話を聞きに、わざわざ三翠園までいらしてくださるお客さまが既に200人を超えました。
事例発表は前職の時から行っていましたが、謝礼は全額会社に入れて、山のような景品に替えていました。どういうことかというと、年に1回、社員さんを集めて、創業記念日に大感謝祭(社員さんなどに感謝するお祭り)を開催していましたが、その際の福引大会や外れなしのビンゴ大会などの景品購入費に充てていたのです。結構な金額の景品ですから、積み上げればちょっとした山になります。
三翠園にきてからは、謝礼をいただいていません。その代わりと言っては何ですが、三翠園にお泊まりいただいたり、宴会や会議室などのご利用していただいたりしています。
今、書いていて思い出したのですが、前職でも、宿泊を伴う事例発表は三翠園のご利用を推奨していましたので、微力ですが売り上げに貢献できたのではないでしょうか。中でも、鹿児島のJAさんでのお話は、記録と記憶に残るものでした。なんと5班に分けて総勢100人も来ていただけたからです。
昨日計算したら計430回 34,000人にお話をしていました。
さて、三翠園での事例発表ですが、当社の役員をお願いしている横田英毅さん(ネッツトヨタ南国 取締役相談役)とコラボレーションすることもあります。初日は前座で私の三翠園で、翌日はメインの横田さんのネッツトヨタ南国さんにベンチマークに行くという豪華なものです。このコラボレーションは、横田さんのおかげで大変好評を博しています。
私の演題で多いのは、得意の「クレームを宝の山にするラッキーコール経営」と、現在、三翠園で取り組んでいる経営の立て直しについてです。自分で言うのも何ですが、三翠園で行っている改革は、ある程度結果も出てきていますので、これから起業する人、先代の会社を事業承継する人にとって、結構参考になるビジネスモデルになると思います。
私の事例発表では、一方的にお話しするだけでなく、事前に受講者さんのお悩みをお聞きして、私なりにソリューションをご提示することもしています。その方がお役に立てるからです。
私がお受けしたお悩みの中で、最も多く、かついろいろな会社さんに共通しているものが二つあります。一つは、「上司や経営者が社員の思いをわかってくれない」「上司や経営者が現場の話を聞いてくれない」というお悩みです。
具体的に言うと、上司や経営者が決めた戦略に不具合があっても、現場の意見や提案は、ほぼ聞いてくれないといったものです。こうしたことが続くと、現場は「何を言ってもムダだ」という諦めムードになってしまいます。
もう一つは、信賞必罰が厳格に行われていないというお悩みです。具体的に言うと、仕事をさぼる人やきちんとしない人を、上司が注意してくれない、見て見ぬふりをするといったものです。端的に言うと、社内に正義がないのです。
社員さんが抱える二つの代表的なお悩みは、私が就任した当時の三翠園にも当てはまりました。
私が、三翠園の社長に就任して真っ先に取り組んだことは、全社員さんとの面談でした。その面談で、多くの社員さんは異口同音に「私たちが意見を言っても、上は何も動いてくれない」「何度言っても何も変わらない」と言いました。私は、現場の意見を傾聴することを徹底するとともに、意見を出しやすい仕組みや方法をつくってきました。現場の意見はすべて経営に届くようにし、取捨選択した上で、直ちに実践する体制に改めました。
今でも社員さんからのご意見に100%対応できているとは思いません。ひょっとしたら忘れているものもあるかもしれません。対応に行き詰まっているものもあるかもしれません。しかし、どんなことがあっても、社員さんからのご意見は対応していこうと思っていますので、私が抜かっていることがあれば遠慮なく何でも言っていただきたいと思います。何でも対応しようと決めています。
また、これは先日ある社員さんから聞いて驚いた話ですが、昔、窃盗をしていた人がいたようです。その社員さんは、窃盗現場を見て上司にそのことを報告しましたが、上司は「いや、私はその現場を見ていないから注意できない」と言って、一切対応してくれなかったそうです。「現場を見ていないから~」という答えは、日本語としては正しいのかもしれませんが、上司の対応としては落第です。このように、まるで正義がない対応を上司が平気でしていたと聞いて、思わず「それは嫌になりますよね、よくぞ辞めませんでしたね」と言ってしまったぐらいです。もちろん、今はそのようなことはありません。悪いことをしている人、ハラスメントなどをしている人がいたら、役員全員が「ダメなものはダメです」「ちゃんと仕事をしてください」と面と向かって言います。絶対に逃げたり、見て見ぬふりをしたりしません。
事例発表では、三翠園での挑戦についてもお話しさせていただいています。今、三翠園では、いろいろな挑戦に取り組んでいます。
世の中は、常に変化し続けています。経営として、何もしないのはいちばんの悪だと思っていますので、スピードを上げて挑戦し続けています。下手の考え休むに似たりといいますが、どうせいくら考えても絶対うまくいく方法なんて見つかるわけがありません。やってみるしかないのです。
「とにかくやってみよう」でスタートしますので、想定外の事が次々に発生し、現場からたくさん指摘されます。それは非常にありがたいことで、指摘されるたびに、われわれは「えっ、そんなことがあったの。ごめんなさい」「意見を言ってくれてありがとう」と言って、早速方針を変えます。節操がないと言われようが気にせずコロコロ変えるようにしています。
誰だって、先のことはわかりません。完璧な経営なんてできないと思います。経営がやるべきことは、リーダーシップを発揮することです。ここでいうリーダーシップとは、社員さんの意見を聴いて、方針を取りまとめ、責任をもって挑戦し続けることです。三人寄れば文殊の知恵といいますが、経営だけで考えていてもうまくいきません。社員さんと一緒に、みんなで知恵を出し合った方が絶対にうまくいきます。ダメだったら、またやり直せばいいのです。いちばん肝心なことは、みんなの意見を聴くことだと思います。そして直ぐに挑戦することです。