仕事の品質を保つために

先日、行政機関にお勤めの方と居酒屋でお話をする機会があり、大いに盛り上がりました。
お話によると、行政機関は市民対応でかなり疲弊しているようで、特に、市民と相対する窓口の職員さんは大変だそうです。突然、込み入った話を持ち込む人に対しても、むげには断れず、全て対応しているため、結果、日中の予定はめちゃくちゃになってしまい、それが大きな負担になっているとのことでした。中でも、声を荒らげ、大声でわめく人の対応は難しく、他の市民への影響もあるため、神経をすり減らし、時間も取られるそうです。
私は、ご縁があって、いろいろな市町村さんから講演に招いていただいたり、相談に乗らせていただいたりすることがよくあります。その際は、お困りの案件に対して、私なりの解決策をズバッとお話ししますので、手前みそですが、結構、好評のようです。

それでは、先ほどの、行政機関の方のお悩みについて、私なりの考えをお話しします。結論から先に申し上げますと、私なら対応いたしません。なぜなら、込み入った案件を突然持ち込まれても、時間に余裕がなく丁寧な対応ができないからです。対応したくてもできないということです。
行政機関の方は、善意から、なんとかしようと思って対応してしまいますが、それは間違いだと思います。それをしてしまうから、「なんだ突然行っても対応してくれるやん」「やればできるやん」と思われてしまい、アポなしの対応が当たり前になってしまいます。
私は、決して「突然来所した市民は無視しても構わない」と言っているのではありません。そうではなく、「そのような大事なお話は、きちんと時間をとって相談に乗らせていただきますので、○日後の○時にもう一度いらしていただけますでしょうか」というように、なぜ今対応できないのかを説明し、その上で後日に対応すべきだと申し上げているのです。
行政機関の方は、「現実問題、目の前の市民にキレられて、『市民の話を聞かんつもりか! 門前払いをするつもりか?』と迫られたら、どうしようもないじゃないか」と反論するでしょうが、私は、そこで屈してしまうからいけないのだと思います。それでは相手の思うつぼというものです。その場で対応できない理由があるのですから、堂々と「今はお話をお聞きいたしかねます」と言うべきだと思います。
たとえ、そう対応したことで、マスコミからたたかれたり市議会で問題となったりしたとしても、「ごめんなさい」「不適切な対応でした」と直ちに謝るのではなく、「私どもは、市民のみなさんの幸せのために、全身全霊をささげて行政サービスに取り組んでいます。今回の場合、込み入ったお話だったため、きちんと対応させていただくために、後日時間をとらせていただきたいと申し上げた次第です。もし、その場で対応させていただいた場合、他の市民の方の対応にも支障が生じてしまいますが、みなさんそれについてはどうお考えになりますか」などと、反論すればいいと思います。逆に、行政機関のサービスのあり方について、問題提起するくらいの気概があってもいいのではないでしょうか。
首長さんには、外圧に負けず「それ、おかしいでしょう」「何を言っているんですか」と言えるぐらい、自分たちの職員に誇りをもって、職員を守っていただきたいと思います。

アポイントがないお客さまへの対応は三翠園でも同じです。当社の営業担当者さんは、非常に多忙です。突然、訪問されてもきちんとした対応ができません。それは、一生懸命に仕事をしようとしている当社の社員さんにとっても不本意だと思います。中には、自分の担当業務を他の人に代わってもらってでも、なんとか対応しようとする社員さんがいらっしゃいますが、それではサービスの品質を下げることになってしまいますので、すべきではないと思います。ですから、三翠園ではアポイントのないお客さまには、対応しなくてもいいことにしました。
私自身、毎日、打ち合わせや会議や面談などでスケジュールが埋まっています。アポなしで訪問されても、対応のしようがありません。ですから、そういう場合は「申し訳ございません」とお断りして、後日、おわびするなりご連絡するなりしています。現実的に、それしか仕事の品質を保つ方法はないと思います。