飛行機は怖い!?

十数年前まで、私にとって最も安らいでアイデアがどんどん浮かんでくる場所、そして最も集中して読書ができる場所、それは飛行機の中でした。機内は、完全に外部と遮断されていますので、なぜかアイデアがたくさん湧いてきます。そのアイデアをメモしておいて、仕事に役立てていました。
しかし、最近は、飛行機でもWi-Fiが当たり前のように使えるようになってきたため、貧乏性の私はLINEやらメールやらを延々とやっています。ほとんど、地上にいる時と変わらないくらい報連相をしていますので、昔のような安らぎ感は全くありません。それでも、私は飛行機に乗るのが大好きです。みんなは「大変やね」と言うのですが、日帰りのフライトも苦になりません。
携帯電話が普及していなかった30年くらい前のことだと思いますが、なんと機内にテレホンカード専用の公衆電話が設置されていました。通話料が高いため、あまり利用者は多くなかったと思いますが、お調子者の私にとっては、飛行機から電話をかけられるだけで興奮しました。特段の用事もないのに、いろいろな人に「あー、今、飛行機の中なんだけどね・・・」と電話して楽しんでいたものです。
飛行機は、乗って楽しいのはもちろん、見ているだけでも楽しいし、搭乗するまでの待ち時間でさえ楽しいものです。そういうこともあって、私は搭乗する時間のおっそろしく前に空港に到着していて、飛行機に乗るまでの雰囲気を楽しみながら、仕事をしています。口さがない友人たちから「それ国際線か?」とからかわれるほどです。

私が、飛行機に興味をもったのは小学校の高学年になった頃です。それまでは日本の軍艦に夢中でした。父に「日本の軍艦」という本を買ってもらい、艦船のシルエットを見れば、船の名前を当てられるぐらい読みふけったものです。
小学校の高学年になると、興味の対象は飛行機に移りました。今度は、「航空ジャーナル」とか「ヒコーキ野郎」とか「航空情報」などの専門雑誌を読みあさりました。私のお小遣いは飛行機関係で全部消えたほどです。
私が初めて飛行機に乗ったのは小学生の時でした。その時の飛行機は、レシプロ機というもので、4発(エンジン4基)のプロペラ機でした。ビッカースバイカウント(第2次世界大戦後に開発された第1世代の旅客機)という機体です。東京までの空路で、非常に興奮したことを今でも覚えています。

その後、私と飛行機との関係はちょっと奇妙なことになりました。相変わらず飛行機自体は大好きなのですが、乗るのが怖くなってしまったのです。
何が怖いのかというと、一つは離陸するまでの距離です。今は、乗客数や向かい風の状態によって離陸するまでの距離が変わるのは理解できていますが、当時は「あっ、今日は普段より長い!長い!長い!どうしてやろう???」と、心配で仕方ありませんでした。もう一つは、離陸中のエンジン音の変化でした。これが最も恐ろしかったです。かつて高知路線ではYS11型機という日本が誇る国産飛行機が使われていました。離陸する時、エンジン出力を最高にして加速していきますが、離陸直前になると、スピードが十分に出て浮力が得られますので、最高出力を維持する必要がなく、エンジン出力を絞り始めます。その時のエンジン音の変化が、エンジンが止まりそうに思えて恐怖以外の何ものでもありませんでした。特に、エアバスA320のエンジン出力を絞る時の音は強烈で、今でもドキドキしてしまいます。そのような状態でしたから、自然と、飛行機を利用しなくなりました。
私の大学は関西にありました。たまに帰省する際、普通なら飛行機で1時間もかかりませんが、飛行機をさけていたため、土讃線(どさんせん)と連絡船を使って約7時間かけて行き来していました。大阪高知特急フェリー(2005年廃止)を使うこともありました。このルートを使うと、夕方高知港を出て翌早朝に大阪南港フェリーターミナルに着きます。約9時間ちょっとの船旅です。
社会人になっても、私の飛行機恐怖症は治りませんでした。若い頃、大阪へ出張する機会が多かったのですが、その時も、岡山まで車で行って、そこから新幹線で大阪に向かうということをしていました。今でこそ高速道路網が整っていますので、岡山までは2時間で行けますが、当時は車で片道5時間かかっていました。そこまでしても飛行機には乗りたくなかったのです。
出張で東京へ行く時も、飛行機には乗りたくないので、なんと岡山から新幹線を使って東京へ出張していました。
海外旅行に行った時は、さすがに飛行機を使わないわけにはいかず、非常に往生したことを覚えています。めったに行かない海外なのに、旅行中、ずっと「帰りの飛行機嫌やな」「怖いな」ということばかり考えてしまい、全然楽しめません。

さすがにこれは何とか克服しないと、人生を楽しめないと痛感しました。そんなある日、何かのニュースで、飛行機の安全性を徹底的に解明する番組があることを知りました。5週連続放映で計5時間もの番組でした。私は、スカイパーフェクトTVに加入して食い入るように見たものです。
番組では、当時の最新鋭機ボーイング777(通称トリプルセブン)の安全性を徹底検証していました。バードストライク(鳥との衝突事故)に直面してもエンジンが止まらないことや、その理由も解説しています。この番組を見て、飛行機を怖いという人はおかしいというぐらい、理詰めで飛行機の安全性を説明してくれました。
おかげさまで、私は、なんとか飛行機に乗れるようになりました。私の友人にも、飛行機を楽しめていない人がいますので、自分がどうやって飛行機恐怖症を克服したのかを熱く語ってあげたのですが、うまく伝えられません。あの番組を見てもらえばいいと思ったのですが、かなり昔の番組ですからそれもできません。
しかし、最近はYouTubeという動画サイトがあります。調べてみると、飛行機の安全性について説明している動画もいくつかありましたので、早くお伝えしてすてきな飛行機の旅を楽しんでいただきたいと思っています。