バージョンアップした花火大会

8月9日、高知市の夏の風物詩「第74回高知市納涼花火大会」が開催されました。前日、気象庁より「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発表されたことで、開催の可否が検討されましたが、避難場所の周知および確保等、対策を講じた上で予定通り開催されることとなり、われわれは胸をなで下ろしました。
花火は、スターマインや仕掛け花火など約4000発が打ち上げられ、それはそれは見事なものでした。観覧されたお客さまは大満足され、おもてなしをしたわれわれも充実した1日になりました。

今年、三翠園は働き方改革を行いながら花火大会の運営に臨みました。かつて、花火大会となると、お客さまを集められるだけ集めようとしたため、1000人近いお客さまで館内はあふれかえり、社員さんたちは深夜までその対応に追われました。聞いた武勇伝(?)によると、「こんなに遅うまでやったぞ」と長時間労働を自慢したり、「お客さまからクレームを言われたけれど、忙しすぎて対応のしようがなかった」といったサービスの低下を容認したりすることもあったようです。しかし、今は、働き方改革を進めなければ、社員さんからも社会からも見放されてしまう時代です。新館が完成し、経営も改まったことですから、これを機に改革を断行していこうと思っています。
花火大会には、もう一つ大きな問題がありました。それはコストを度外視してきた事業運営です。料金設定がありえないものだったのです。これではいくら集客してもしんどいだけです。
こうして、料金改定をお願いすることにしたのですが、難しいのはこれまでご利用くださっていた団体のお客さま対応でした。長いお取引の歴史があり、料金を一方的に改定することはできません。団体のお客さまについては、営業担当者を通じて、丁寧に、2年がかりで料金改定をお願いしました。
 個人のお客さまの宿泊プランも見直しました。私が着任する前は、花火が見えるお部屋もそうでないお部屋も関係なく、通常の料金をいただいていたのです。これは大変もったいないことだと思いました。私が着任したのは6月でしたので、その年の花火大会は手の打ちようがありませんでしたが、翌年以降は、料金設定を全面的に見直したり、花火が見えないお部屋については屋上で観覧していただけるプランをつくったりしました。
 お庭でご観覧いただくプランの料金も見直しました。以前は3000円程度でしたが、とても採算に合いません。今は1万1000円に引き上げさせていただきました。昔の料金を知っているお客さまの中には、「えー!高いやん」と言って断る方もいらっしゃいましたが、赤字で集客することはできません。それでも予定していた人数のお客さまにご利用いただくことができました。
また、花火の時は、玄関前でビールのほかに唐揚げの販売もしていましたが、その利益を調べてみると1件当たり数十円しかありませんでした。全く労働力に見合っていません。昨年は、ビールだけにしてみたのですが、花火の日は近隣にお店が乱立している中、あえて当館が人員を割いてビールを販売する必要があるのか疑問に思いました。いろいろ検討しましたが、残業代を含めると全く採算に合わないことがわかりましたので、今年は玄関での販売を止めることにしました。
あれやこれや適正な人員配置と適正な料金設定をした結果、今年は23時ごろには後始末を含めて運営を終えることができました。三翠園の素晴らしいところは、終わった部署の人たちが、どんどん応援にかけつけてくれることです。おかげさまで、かつては午前さまが当たり前でしたが、今年は、もうそういうこともなくなりました。
売上金額は、無理して1000人集めた時と比べれば低いですが、ほぼ自社の社員さんだけで運営できましたので、利益率はこれまでで一番高かったのではないでしょうか。
大事なことは、売り上げにこだわって、たくさんのお客さまを集めて安心するのではなく、何が一番会社にとって大事なのかを真剣に考えて、それを愚直に実行していくことだと思います。