ホウ・レン・ソウは愛

社内報せいちゃんまマンコーナーから

今回は、ゴールドスタンダードの3番「報告・連絡・相談」についてご説明します。
報告・連絡・相談(ホウ・レン・ソウ)の組織における意義(価値や重要さ)は、会社の仕事がチームワークで成り立っていることにあります。特にホテリエの仕事は、いろいろな部署との連携が欠かせません。その連携の要となるのが意思疎通(意思が相手に伝わること)であり、ホウ・レン・ソウはその意思疎通のツールです。また、チームが結束して事に当たるためには、情報・意思の共有が欠かせません。ホウ・レン・ソウは情報・意思共有のツールでもあります。

もう一つ、ホウ・レン・ソウには重要な意義があります。それは「心理的安全性」の醸成です。
私は前職の四国管財に新入社員として入社し、一通りの現場作業を経験していきましたが、当初、耳にタコができるくらい上司から「ホウ・レン・ソウしろ」「ホウ・レン・ソウしろ」と言われ続けたものです。そう上司は言うものの、会社にとって都合の悪い情報を上げると機嫌が悪くなりました。
夜、上司の自宅にホウ・レン・ソウの電話をすることもありましたが、とても機嫌が悪いときもあり、「そんなのは自分で考えろ」と言われました。しかし、別の日に同じような内容をホウ・レン・ソウしないでいると、「なぜ言わなかった」と叱られました。同じ内容でも、気分によって言うことが変わるのです。ホウ・レン・ソウは、しても、しなくても叱られました。ホウ・レン・ソウは、しても幸せな気持ちになれませんでした。
一般的に、会社では、ホウ・レン・ソウを本来の使い方ではなく、人を管理する手段として使います。ですから、「聞いてない」とか「聞いてないからダメだ」などと部下を責めるときにホウ・レン・ソウを持ち出します。会社を守るためや、上司が自分を守るために、ホウ・レン・ソウという都合のいい言葉を使って、部下に脅しをかけているのです。
では、脅された側はどうするのかというと、仕方なく、最小限の情報しか上げなかったり、自分にとって都合の悪いことは上げなかったりするようになります。私は、ホウ・レン・ソウで脅される側にいましたので、その気持ちがよくわかります。

かつて、私は、本物のホウ・レン・ソウを追い求めて、日本で最初にホウ・レン・ソウを仕事に活用している人に会いに行ったことがあります。その人は、愛知県の知多半島にある「まるは食堂」というエビフライで有名なお店におられました。創業者の「相川うめ」さんです。当時90歳を超えていました。私は、あいさつもソコソコに「なぜホウ・レン・ソウに力を入れているのですか」と尋ねました。
幼い頃、うめさんの家はとても貧しく、両親はいつも働いていたそうです。うめさんが小学校から帰ってくると、お父さんとお母さんは近所の畑で働いていました。子どもが不安にならないように、毎日「今日は右の3段目の畑におるよ」「今日は左の畑におるよ」とメモ書きを残してくれていたそうです。これがうめさんの「ホウ・レン・ソウの原点」でした。
私は、うめさんに「ホウ・レン・ソウとは何ですか」と尋ねました。すると、うめさんは「それは愛だがやー」と即答されました。ホウ・レン・ソウは、大切な人を不安にさせないための愛だとおっしゃいました。
うめさんのご両親は、うめさんにホウ・レン・ソウすることで、うめさんを心配させないようにしましたが、ご両親もうめさんにホウ・レン・ソウしたことで安心できたのだと思います。会社も同じだと思いました。本来、ホウ・レン・ソウは、お互いが安心するための仕組みだったのです。
三翠園では、ホウ・レン・ソウをしないと叱られますが、ホウ・レン・ソウをすれば褒められます。ホウ・レン・ソウをして叱られることは絶対にありません。なぜなら、「ミスやクレームの原因はすべて会社にある」という考え方が根底にあるからです。
ホウ・レン・ソウは、人を管理するための仕組みではなく、自分と相手を安心させるための仕組みです。ホウ・レン・ソウは「愛」です。
三翠園の仲間が安心して働けるということは、「心理的安全性」が保たれていることを意味します。これは会社にとって大変重要な意味があります。Googleが「アリストテレスプロジェクト」で、「生産性の高いチーム」を調査したところ、「心理的安全性」(Psychological safety)が密接に関係していることがわかりました。「心理的安全性」の高い状態とは、上司や同僚の目を気にせずに、言いたいことや言うべきことを自由に言える状態をいいます。
会社は利益を出し続け、永く存続できなければいい会社とはいえません。そして、いい会社にするためには、生産性を高める必要があり、必然的に「心理的安全性」が重要になるということです。
ホウ・レン・ソウは、お互いを思いやる仕組みです。みんながホウ・レン・ソウすることで、社内に「心理的安全性」が醸成できます。このように、いい会社にするためには、ホウ・レン・ソウが欠かせないのです。