昨日の三翠園がライバル

社長の役割は、時代の変化に対応すべく、社員さんを先導することであり、そのためには、役員、幹部、社員さん、協力業者さんなどの意見をよく聞くことが肝要です。独断専行は、スピード感があり、力強い経営に見えますが、個々の社員さんたちのポテンシャルは引き出せません。つまり、組織として最大の力を発揮させることはできないのです。
社長がワンマンだと、部下は意見を言わなくなります。言っても聞いてくれないし、ヘタに逆らうと人事考課でマイナス査定されるか、遠隔地にとばされるなど報復人事をされかねないからです。そうなると、社員さんたちは、無難に「言われたことだけしよう」と思うようになります。これがワンマン経営の弊害です。そういう経営にしないためには、社長が皆の意見を聞いて、行動する姿勢を見せ続けるしかないと思います。 
そもそも、社長が独断ですべてを決めてしまったら、下の人たちが楽しくありません。「随処に主となれば、立処皆真なり」(臨済禅師)という有名な言行録がありますが、「どんな会社にいても、どんな仕事であっても、自分が主人公となって(積極的に)行うならば、そこでの生きざまはすべて真実である」というように、人は主体的に働くことができれば、やる気も出るし、幸せにもなれます。社長が皆の意見を聞くことは、ウエルビーイング経営にもつながると思います。
 今、私が取り組んでいることは、長期的な戦略、現場フローの見直し、クレーム対応、商品づくりなどいろいろありますが、特に注力していることは内面的な組織づくりです。具体的にいうと、人事戦略を立てたり、社内の風通しを良くして組織間の連携を良くしたりすることです。これをやらないと会社の質は良くなりません。皆が主体的に仕事をする上で、部門間の円滑な連携は重要な土台となります。その土台づくりをしているのです。

もう一つ注力していることがあります。それは後継者の育成です。ありがたいことに、現在、当社には銀行からの出向者が2名おられます。この方たちがチェック機能を担ってくださっているおかげで、安心して経営ができます。その意味からも今が後継者を育成するチャンスです。
三翠園のプロパー社員さんは、現場の業務に精通されており、頼りになる存在です。半面、経営についてはあまり学んでいないように思います。これまでは、会社を回していくのがやっとで、経営というよりは運営という状態でしたから仕方がないでしょう。しかし、これからは、どんなに外部環境が変化しても成長していける強靱(きょうじん)な経営と組織づくりを学んでほしいと思います。私の知見はすべて伝授するつもりです。
私が後継者に望むことは、自立型の姿勢です。自立型の姿勢とは、どんな環境や条件であっても、決して諦めず、自分の能力と可能性を最大限に発揮して道を切り拓いていく姿勢です。人のせいにせず、根本的原因を自分自身の中に見い出して、解決していく姿勢です。
会社を先導する人は、リスクを恐れず未知の領域に果敢に挑んでほしいと思います。ファーストペンギンになってほしいと思います。
ですから、彼らが提案することは、ほとんど承認するようにしています。「新しいことに挑戦したい」という姿勢を大事にしたいからです。ダメ出しはしませんが、もっといい企画にするために、「こうしたらもっといけるよ」「どうせやるなら、印象に残るようにガツンといこうや」などとアドバイスすることはあります。
自分が提案したことが形になれば本人も楽しいでしょうし、自信もつきます。たとえ、失敗したとしても、すべて社長である私の責任ですから、本人を責めることはありません。本人は、たくさんの学びが得られるだけです。むしろ、たくさん失敗してもらった方が早くコツをつかめるので、どんどん挑戦してもらいたいくらいです。
とはいえ、提案されたプランの中には、「これは誰が聞いてもやった方がいいと思うけど、それ具体的に誰がやるの?」というものもあります。ただ「あれしたい、これしたい」というだけの提案は無責任な提案です。本気で考えたプランとはいえません。「これをこうして、ああしたら実現できます」というプロセスまで考えてほしいと思います。
「館内にぐるっとプラレールを走らせたいです」
「いいねえ、どういう経路で線路を敷くの?」
「・・・」
「車いすのお客さんも来館されるけど、そこはどう考えているの?」
「・・・」
これでは、いくら面白いプランであっても進めようがありません。実現したときのことを考えて、すべてのケースをシミュレーションしておく必要があります。
今は、まだ漠然としたプランも少なくありませんが、やり取りを重ねていくうちに、本気のプランが増えてくると信じています。
何よりも大事なことは、変え続ける歩みを絶対に止めないことです。人は変化を恐れますが、半面、変化すればワクワクします。昨日の三翠園がライバルだと思って、日々変え続けていきたいと思います。