報告しない社員さん
「なぜ報告しないんだ」と激怒したり、叱責したりする上司がいます。しかし、そんなことをしても、その社員さんはまた報告しないでしょう。社員さんが上司に報告しない理由は、報告すると叱られたり、責任をとらされたりすると思うからです。
一方、上司ですが、これには三つのパターンがあります。一つのパターンは、部下が報告しなかったことで、自分が管理能力を問われると考え、自分を守るために社員さんに「激怒」するパターンです。完全にベクトルが自分に向いています。
もう一つのパターンは、社員さんに一生懸命に向き合おうとしているがゆえに厳しく叱るパターンです。「なぜ言ってくれないの。事前に言ってくれたら、本人にも、会社にも、もっといい結果になったのに!」と悔しくて叱るパターンです。こちらはベクトルが相手に向いています。
さて、最後のパターンですが、これは激怒もしなければ、大して叱責もしないパターンです。なぜそうなるのかというと、報告を受けなかったことで「ラッキー、ややこしいことにかかわらなくて済んだ」と思うからです。これも自分にベクトルが向いています。
上記三つのパターンの中では、二つ目が一番まともな部下との向き合い方ですが、残念ながら、どのパターンも部下からの報告は受けられません。
では、どうしたら報告があがってくるようになるのでしょうか。さらに厳しく叱ったらどうでしょうか。恐怖にかられた部下は報告をあげるかもしれませんが、耳障りの言い報告、つまりうそを言うようになると思います。なぜなら、本当のことを言ったにしろ、何も言わなかったにしろ、責められることを部下は知っているからです。部下はうそをつくしかないのです。
このように、部下を怒鳴ったり、叱責したりしても何も解決しませんし、メリットもありません。むしろ信頼関係がどんどん損なわれていくだけです。
私の経験上、部下から報告があがってくるようにするためには、まず、報告があがってこない原因と責任はすべて自分にあることを明言し、「言いにくくてごめんね」「もし、何かあったらどんなことでも言ってきてね、一緒に対応するから」と言い続けることだと思います。
次に、肩書が上の人ほどホウ・レン・ソウを増やすことだと思います。特に社長が率先すべきです。私は、これを徹底しました。ですから、一番ホウ・レン・ソウが多かったのは私だと思います。背中を見せて、「社長でも、こんなことを相談してくれるんだ」と思ってもらえるように、とにかくホウ・レン・ソウしました。
そして、実際、報告をしてくれたら、「よくぞ報告してくれた」とばかりに、報告してくれたことに全力で感謝し、一緒に汗をかいてその案件に向き合うことです。そうすることで、部下に「この人に報告すると、叱られるどころか感謝されるんだ」「報告すると一緒に対応してくれるんだ」と思ってもらえるようになります。
私は、社員さんが報告をあげてくれるたびに「こういうことを報告してくれたけど、この話ってとてもありがたいことで、助かりました」「またよろしくね」というように、社内報などで全ての社員さんにフィードバックしていました。
一つひとつの案件に対して、このように向き合っていけば、きっとホウ・レン・ソウはよくなるはずです。
そして、ホウ・レン・ソウがたくさんあがってくるようになったら、同じように社員さんと向き合う人を増やしていきます。すると、「この人は相談にのってくれる」から「この会社の上司は相談にのってくれる」になっていき、会社全体として、ホウ・レン・ソウが回るようになります。四国管財では、このようにして、いつでも何でも相談できる人を20年かけてつくっていきました。