積極的に聴く
信頼関係の築き方の1丁目1番地は、相手の話を「よく聴く」です。ここでいう「よく聴く」とは、相手の話を傾聴するという意味だけではありません。こちらから積極的に働きかけて、相手の話を引き出すという意味もあります。
私は、遠慮なく反対意見や痛烈なアドバイスを、どんどん言っていただきたいと思っています。なぜなら、その方が絶対にいい施策にでき、厳しい意見ほど自分を成長させてくれるからです。
三翠園にきて驚いたことがあります。上司や社長に反対意見をもの申す社員さんをほとんど見かけないのです。会議などでも反対意見はまずでません。こちらから質問すれば、さすがに返答しますが、自ら、「それは違うのではないですか」と言ってくる人はいません。意見を言わないようにする社内風土ができあがっているのだと思います。これでは社員さんの話を聴くことができません。これも信頼関係の形成を妨げる要因になります。
しかし、私は聴く気満々ですから、「ねえねえ、どう思う?」などと問いかけて、意見を引き出すようにしています。何か答えてくれれば、「その意見いただき」と言って、意見を方針や施策に取り入れます。長年、現場で働いてきた社員さんたちの意見は本当に貴重だと思うからです。
周りから見ると、「社長が耳障りのいいことを言って、社員にゴマをすっている」とやゆされるかもしれません。しかし、どう思われようが社員さんの話を積極的に聴く方が信頼関係は絶対に深まります。それは間違いありません。
では、どうしたら意見がでやすい社内風土に変えられるのか? 私は、できるだけ社長の存在感を消して、表にでないようにしています。
四国管財では、最初こそ豪腕を振るっていましたが、退任前の数年は、手柄は全部幹部や社員さんのものにして、社長は責任だけ取るようにしていました。社員さんには、「もう社長がいなくても会社は回る」「俺たちが会社を回しているんだ」と思ってもらえたのではないでしょうか。結果、社内のコミュニケーションはよくなり、活発な意見もでるようになりました。
すると、面白いことに、社長は全く威厳がなくなりますから、宴会の時に社長に優先的にお酒を注ぎに来る人はいなくなりました。
これについては、ネッツトヨタ南国の横田さんも同じようなことをされていると聞いて、自分が間違っていなかったことを確信しました。横田さんも集合写真を撮る際は、真ん中にいないようにしたり、宴席でも「役員がそこに座る?」と思うようなところにチョコンと座ったりします。お店の人は、誰が偉い人なのかわからず、困るくらいです。それぐらい存在感を消すようにしています。
経営の意思決定やリスクテイクについては社長が担いますが、それ以外は、社員さんたちが自発的に考えて行動するように、社長が働きかけることが大切だと思います。その方が、社内のコミュニケーションはよくなり、結果、意見もでやすくなります。
「積極的に社員さんの意見を聴く」「社員さんが自発的に考え行動する環境をつくる」、これも信頼関係を構築する上で大事なことです。
※写真は温泉までに行くまでにある痛い道