どんな応援ができる?
四国管財では、新卒者向けに、辞めることを前提にして入社する「夢実現コース」というものをつくりました。そのコースをつくるきっかけになったのは、15年ほど前の新卒採用でした。その年は、当社にとって、奇跡的に大卒が3人採用できた当たり年です。どの人も人柄がすばらしく、仕事もできました。中でもSさんは、お掃除の仕事に向いており、一番長く働いてくれそうだったので、ひそかに期待していました。
ところが、しばらくすると、Sさんが会社を辞めたがっているといううわさが聞こえてきました。まさに青天のへきれきです。まずは一度本人に会って話を聞いてみたいと思い、面談をお願いしました。しかし、なかなか会ってもらえません。私は、何度も面談をお願いしました。とうとう根負けしたのか、ついにSさんとの面談がかないました。
Sさんは、意を決したように、「私は子どもが好きで、小さいころの夢は学校の先生になることでした。ずっと忘れていましたが、いざ就職してみてよくわかりました。私、やっぱり教員になりたいんです」と言いました。私は、「おお、それめちゃくちゃいいじゃん。絶対そうしたらいいよ。がんばりや!」と即答しました。
「えっ?」。彼女は拍子抜けしたようでした。社長に会ったら最後、絶対に引き留められてしまうと思っていたようです。普通の会社なら、そうしたかもしれません。しかし、Sさんが幸せになるためにはどうしたらいいのか、その答えは明白でした。ですから私は即答したのです。
しかし、学校の教員になるためには教員免許状が必要です。教員免許状を取得するためには、免許状に対応した教職課程のある大学・短期大学等に入学し、法令で定められた科目および単位を修得する必要があります。
Sさんは教員免許状をもっていませんでした。教員になるためには、教職課程のある大学・短期大学等にもう一度入学する必要があります。当然、お金もかかります。Sさんは、どうしたらいいか悩んでいました。
いろいろ話し合った結果、彼女は当社で働きながら、教員免許を取るために、大学に通うことになりました。会社として、どんな応援ができるか、一緒に考えました。当時、本社勤務でしたが、朝が早く夜も遅いため勉強の時間がとれません。そこで勉強の時間を確保できる現場に異動してもらうことにしました。
その後、Sさんは努力して教員免許状を取得。まずは講師になりました。当時、教員の採用は非常に狭き門でした。
私は県の教育委員会にいましたから、どうやったら採用試験を通るか、担当部門に相談に行きました。折しも他県で教員の裏採用が発覚し、大騒ぎになっていた時で、採用問題についてはかなりナーバスでした。とても妙案を考えてもらえそうにありません。
そこで、次の手を考えました。彼女は、当社で約2年間勤務した実績があります。Sさんが教員に向いていることは、雇用した企業がよくわかっています。そこで、「企業による推薦採用の制度を新たにつくっていただけませんか?」と直談判しました。しかし、まったくの新制度ですから、担当者が「はいわかりました。やりましょう」と簡単に言うはずもありません。実際、思いっきりドン引きされました。それでも、「いや、私は絶対に諦めませんよ。いい先生には、企業経験がある人も多いじゃないですか」と食い下がりました。
そんな押し問答を私が続けているうちに、Sさんは、見事、実力で採用試験に合格しました。こうして、Sさんは晴れて夢だった教員になって、四国管財を卒業されたのです。