安全、安心への思い ~ANAの名物機長(後編)~

私が乗った飛行機は、着陸態勢にはいりました。そして、また、あの機長のアナウンスが始まります。

「皆さま、当機は間もなく鹿児島空港に着陸いたします。地上の優秀なスタッフからの連絡によりますと、鹿児島空港は晴れ、気温は○○度と、皆さまを歓迎するかのような大変心地よい天候でございます」
「皆さま、当機はただ今、鹿児島空港に無事到着いたしました。鹿児島空港では、全日空の優秀な地上職員が満面の笑みを浮かべ、皆さまをお待ちしております」
「本日は、ご利用ありがとうございました。今後もスターアライアンスメンバー全日空をよろしくお願いいたします。私は、機長席より皆さまをお見送りさせていただきます。盛大に手を振っておりますので、ぜひともご覧ください。それではまたのご搭乗をお待ちしております。ありがとうございました」

こうした機長さんのアナウンスで、すっかり楽しくなった私は、自分の名刺にお礼を書き、「これを機長さんに渡してください。『すっーーーごく』楽しい旅でした」と言って、CAさんにメッセージを託しました。

私は、あまりにうれしかったので、この話をいろいろな人にしました。しかし、「その機長さんなら僕も聞いたことがあるよ」などと言う人が結構いて、どうやら有名な方だったことがわかりました。この方は、全日空の山形和行機長さんで、機内アナウンスで一躍有名になり、ラストフライトから6年が過ぎたいまも、年3回全国でファンクラブの集いがあるという伝説の機長さんです。全日本空輸株式会社を退職した後、講演活動などで活躍されているようです。
山形機長さんが、どうしてこういうアナウンスをするようになったのかについて、ご本人はこう語っています。

「機長になって、社外の方といろいろお付き合いをしていくなかで、飛行機が怖いとおっしゃるお客さまが、たくさんおられることに驚きました。そういうお客さまが飛行機に搭乗され、万一、緊急脱出になったらパニックになります。二次災害が起こるかもしれません。パニックを防ぐためにはお客さまに安心していただけるアナウンスが必要だと思いました。しかし、普通のアナウンスでは、お客さまはほとんど聞いてくださいません。そこで、少しインパクトがあるアナウンスをするようになったのです。全日空では、毎年50~70人ぐらいのお客さまが、不安から気分が悪くなったり、体調を崩されたりしています。そのうち7割のお客さまは、離陸前に具合が悪くなっています。こういうお客さまに安心していただくためには、ドアが閉まったらすぐにアナウンスする必要があります。安心していただくためにしたことはアナウンスだけではありません。時間があるときには、ドア付近のゴミ拾いもしました。通常、搭乗口のドア付近は扉がじゃまで、なかなか掃除が行き届きません。しかし、入り口にゴミがあったら、『この飛行機はちゃんと整備しているのかなあ?』と不安になるかもしれません。そういうお客さまが、体調を崩される確率が高いのだと思います。私は機長を32年間務めましたが、客室乗務員が笑顔でお客さまをお迎えしてくれたこともあって、運がいいことに、体調を崩されて引き返したり、途中の空港に緊急着陸したりしたお客さまは一人もいらっしゃいませんでした」

最後に、私のメンターである福島正伸先生(アントレプレナーセンター社長)の言葉をご紹介します。福島先生は、JAL日本航空の再生もお手伝いしており、いろいろな研修を担ってこられました。その福島先生が私に話してくださったことが印象的でした。
「中澤さん、『安全飛行で一番重要なこと』が何かわかっちゃいました」
「えっ、それは何ですか?」
「それはね、仲良しでーす!」
「仲良し?」
「そうなんです。例えば、機長と副操縦士の仲が悪かったら、安全のための連携プレーもうまくいかないと思うんです。だから、僕は『仲良し』を大事にして、皆がそうなってもらえるように、いろいろなお話をしているんです!」

だから我らが三翠園ももっと仲良しになる為に今日も顔晴ります

※写真は本日から売店で配布の非売品のポストカードです。 これは私の娘が思いを込めて三翠園が幸福な旅館になる為に書いてくれて そして福島先生のご縁で顧問をさせて頂いています。さいたま市の株式会社 日本メンタリング・マネジメント協会さんの鈴木社長がデザインして制作してくださいました。この会社は沢山の障がいをもった方が活躍されています。皆さんも是非ご注文をお願い致します。