イエナプラン教育の意義
11月6日、日本におけるイエナプラン教育の第一人者であるリヒテルズ直子さんによる講演会が高知市の芸術学園幼稚園ホールで開催され、私も参加いたしました。第一部は「イエナプランってどんな教育?」という題の講演です。第二部は、「公教育にイエナプラン教育を採り入れる意義」と題した対話(ディスカッション)でした。第二部には、高知県の教育長さんや地元の議員さんも参加され、大変有意義な講演会となりました。
講演を聴いて、改めて日本の学校教育は遅れていると感じました。年齢で学年分けして、人数でクラス分けして、知識詰め込み型の教育をするスタイルは限界にきています。そのことは、現場も文部科学省も十分理解しており、改革を急いでいるようですが、いかんせん詰め込み教育で育ってきた人たちが考えることですから、私の個人的な感想としては、残念ながら抜本的な改革は難しいのではないかと危惧しています。
私は、「高知市不登校問題対策委員会」に、経営者の1人として参加し、提言の取りまとめに加わらせていただきました。
文部科学省の調査によると、令和5年度の国立、公立、私立の小・中学校の不登校児童生徒数は約34万6千人、高等学校の不登校生徒数は約6万9千人もいるそうです。実際には、表に出ていない人もいますから、大きな社会問題になっているといえます。
以前から、不登校問題の対策としてイエナプラン教育がいいのではないかという声がありましたが、ほとんど導入には至っていません。私も、「高知市不登校問題対策委員会」の委員として、イエナプラン教育の導入を提案しましたが、私の説明がいつもながら要領を得なかったこともあり、箸にも棒にもかかりませんでした。熱意だけはありましたので、遠慮せず、もっと熱く語ればよかったと悔やんでいます。それほど、現状の学校教育には危機感をもっています。
私は、経営者として若い社員さんたちをたくさん見てきましたが、同じ年齢の人だけを集めて授業をする学校教育のあり方には疑問を感じています。これは、不登校問題の対策に限ったことではありません。社会に出れば、みんな、最大で40歳くらい年齢差のある人と一緒に働くことになります。いきなり、「社会人なんだからうまくやれ」といっても無理があると思います。学校生活のうちから、少しずつ、異なる年齢、異なる意見の人との接し方、合意形成の仕方、自律・自発的な考え方などを身につけておくべきではないかと思うのです。その点イエナプラン教育は、社会に出てから役に立つ人間力を育んでくれますので、ありがたいと思います。
余談ですが、私のメンターである横田英毅さんのネッツトヨタ南国は、イエナプラン教育の学校が、そのまま会社になったような企業です。それぐらい、先進的ないい会社です。
さて、イエナプラン教育ですが、講演会に参加できなかった方のために、どういうものか簡単にご紹介します。イエナプラン教育とは、ドイツで始まり、オランダで広がった教育モデルです。子どもたちを価値ある存在として大切にし、自律と共生を養います。
イエナプラン教育の特徴としては、まず、原則として異年齢学級(異学年)を採用していることが挙げられます。中等教育以上においては異年齢学級もしくはそれに準じた仕組みを採用しています。こうすることで、教え合い、助け合いが活発になるとともに、違いへの尊重心が育くまれます。毎年、役割を交代するため、社会に出た時のリーダーシップとフォロワーの関係、文化の継承と変革を学ぶことにもつながります。
また、イエナプラン教育は、主体性を大切にしているため、自分の意見や考えを表現する経験、自分の意見が受け入れられる経験を積み重ねられます。これによって、自信や自己肯定感を高められます。一方、対話も重視しており、異なる意見に対して、話し合って合意に導く力も育てます。
このように、イエナプラン教育とは、現在の知識詰め込み型の教育とは全く異なるものなのです。
さて、かくいう私は、小学生のころから勉強する意義がわからず、それを言い訳にして、自由奔放に生きてきました。ですから、私の学生生活は、さながら「ひとりイエナプラン」だったように思います。
※日本イエナプラン教育協会ホームページ(HP)等を参考・引用。