これって本当にプレー・ファースト!?

若い頃、あまりにも大好きで、前の晩になかなか寝付けなかったり、朝早く目が覚めてしまったりしたスポーツが二つあります。野球とゴルフです。
野球は、小学生の頃から草野球をしてきました。大学生の時は、野球だけでなく二つのソフトボールチームにも入っていたくらい野球は大好きなスポーツでした。
ゴルフのデビューは中学1年の時です。父にゴルフ場に連れて行ってもらい、2人でハーフを回りました。父は、よく「清一と一緒に回りたい」と言っていましたが、父はこの1年後に急逝してしまいましたので、父の夢はかなえてあげられませんでした。
私がゴルフを始めたのは社会人になってからでした。接待で必要だったため、仕方なく始めたのです。当時を振り返ると、ゴルフは1日つぶれてしまうし、気を遣ってしんどいし、走り回らなければいけないし、と全く楽しくありませんでした。

ゴルフがしんどかった理由は、私の特性に起因していると思います。第一に、私はサービス精神がありすぎて、周りの人が楽しめているかどうかが気になって仕方ありません。特に知らない人と回る場合はなおさらで、気を遣いすぎて疲れてしまいます。そうなると、当然、いつにもましてスコアはメロメロになります。
その後、仕事がかなり忙しくなったこともあって、それを理由にゴルフのお誘いには「行けたら行く」と言って、逃げ回っていました。

ゴルフがしんどかった第二の理由は、私が超せっかちなことです。この性格を助長したのは、前職の上司でした。その上司は大変ゴルフがうまい人で、私以上にせっかちな人でもありました。プレー・ファースト主義者で、「人を待たせるな」「キャディーさんに迷惑をかけるな」が口癖でした。「どうせヘタなんやからティーインググラウンド(ティーグラウンド)で打ち終わったら、クラブをたくさん持って走れ走れ」と言われました。おかげさまで(?)私は30年以上、素振りすらせず、ひたすらプレー・ファーストで打ちまくってきたのです。
もともとせっかちな上にプレー・ファーストをたたき込まれていますから、人と一緒にコースを回ると、自分のグループ(パーティー)のプレー・スピードが気になって仕方ありません。後ろのグループに迷惑をかけるのではないかと、気が気でないのです。
ですから、私はパターも自分の順番がきてからラインを見に行くということはしません。他の人が打っている時に、邪魔にならないように自分のラインを見て、頭の中でシミュレーションします。そして、自分の番がきたら瞬時に打ちます。一緒に回った人には「何も考えないで打つね」とあきれられるくらいです。しかし、それが私のルーティンになっていますので、何も問題はありません。いかに人が打っている間に、頭の中でシミュレーションしておくかだと自分なりに理屈をこじつけています。
こんな私に思わぬ追い風が吹きました。ゴルフのルールが2019年1月に大幅改正されたのです。新規則では全てのプレーヤーが速やかにプレーする「プレー・ファースト」を推奨しています。例えば、従前はホールに遠いプレーヤーから順にプレーすることになっていましたが、新規則ではプレーのペースを守るために、準備ができている人からプレーできる(レディゴルフ)ようになりました。時代がせっかちになったのでしょう。このルール改正によって、私は遠慮することなく、「お先に打ちます」と言えるようになったのです。
人と一緒に回ると、大概、準備に時間がかかる人がいるものですが、私は、自分のパッティングラインが、その人と反対の位置にあれば、ちゅうちょすることなく「お先に打ちます」と言って打ちます。結果は、まず入りませんから、また「お先に」と言って、また打ちます。マークするなどということはしません。後ろのグループが気になるからです。
しかし、先般、この「プレー・ファースト」に関する、大変残念な体験をしました。あるツアーで、県外に旅行に行った時のことです。名門ゴルフ場でプレーできるということで、もううれしくて、うれしくて、ワクワクしてそのゴルフ場へ行ったのですが、そのゴルフ場の経営課題が、利用者数の拡大だったようで、「プレー・ファースト」ならぬ、“会社ファースト”の運営をしていたのです。どういうことかというと、1日にプレーする人数を増やすために、回転数を上げようとしていたのです。
とにかくキャディーさんは、「早く!、早く!、早く!」と急(せ)かします。私たちがグリーンに上がると、すでにキャディーさんはいません。次のホールへ出発しているのです。私たちは、初めてのコースの初めてのグリーンなのに、誰に聞くこともできません。これには、さすがの私もびっくりして、「ちょっと勘弁してよ」と思いました。このゴルフ場は名門かもしれませんが、こんなことをしていたら、回転数こそ少し上げられるかもしれませんが、リピート率は低下していくのではないでしょうか。私のように、嫌な思いをする人が毎日、毎日増えていけば、確実にファンは減っていくと思います。みんなが快適にプレーするための「プレー・ファースト」は大事ですが、会社の利益を優先した“会社ファースト”は感心できません。
一般的な会社の経営も同じだと思います。効率を上げることを経営課題にしている会社を多く見かけますが、効率アップを利己のためにするのか、利他のためにするのかが大事です。それを間違えたら、顧客は黙って去っていくと思います。

 ゴルフがしんどかった第三の理由は、教えられるのが苦手な性格だからです。ゴルフほど人に教えたくなるスポーツはないようで、教え魔人口は相当なものだと思います。しかも、私は、教えたくなるタイプらしく、教え魔を引き寄せてしまいます。
 親切に「教えてあげようか」と言われると断れないもので、つい「あ、はい・・・」と言ってしまいます。それでどうなるかというと、教えてもらってもその通りにできませんから、また教えられます。その繰り返しになり、自分の中では「あー、今日は終わった」となってしまいます。
 私は、マイペースで、自由にやりたいタイプです。わからなければ聞きます。まれに、私に聞いてくる人がいますが、私に聞かれても、ほぼお役に立てませんし、人に教えるのは、なんか自分が偉くなったようで苦手です。
 こうした特性は、レッスンプロに習う際にも顔を出します。プロは手取り、足取り教えようとしますが、それが耐えられないのです。1時間習うのも苦痛で、「要点だけ言ってください。あとは勝手にやります。何かあった時だけ質問させてください」と言いたくなります。
少しだけ教えてくれるようなレッスンプロがありがたいのですが、なかなか地元にそういう方はいません。ところが先日、そういう方に出会ってしまいました。その方に、私の特性をご説明したところ、笑いながら「それは教える方も楽やし、全然そっちの方がいいですよ」と言ってもらえたのです。とはいえ、ホテルの仕事は年中無休ですから、なかなかレッスンを受けられないでいます。

最近、私と同じような考えをする友人が案外いることがわかりました。「それだったら気を遣わないゴルフを一緒に楽しみたいね」ということになり、ゴルフを再開しようと思っています。
最初に書いた会社朝までまちどうしいスポーツのゴルフというのは凄い下手な20代に上下関係なく和気あいあいとして回っていた時のゴルフです。
今まで一生懸命に働いてきましたが、これからは自分の時間も健康も大切にしたいと思いますので、早くゴルフのレッスンを受けられるようになりたいものです。