役員総出のベットメイク
三翠園は、全国旅行支援のおかげで、ようやく平日でもたくさんの観光バスで駐車場が賑(にぎ)わうようになりました。
連日、多くのお客さまにご宿泊いただいていますが、満室まで受け入れた場合、人手不足のため、翌日のお客さまのチェックインまでにベッドメイクが間に合わなくなってしまいます。
大きなホテルなら、館内施設でくつろいでいただき、お部屋へのご案内を1時間程度お待ちいただくこともできるかもしれませんが、三翠園には小さな喫茶コーナーしかなく、そうすることもできません。このため、最近は、役員総出でベッドメイクのお手伝いをしています。
とはいえ、「忙しい」という言葉は絶対に言わないようにしています。心のなかでは、「時間がない」「忙しい」と思ってしまうこともありますが、絶対、口には出しません。言っても何も解決しないのと、「忙しい」という言葉は、できない理由の最有力候補だからです。「できない理由」を考えていたら何も解決しません。「どうしたらできるのか」だけ考えるように意識しています。
さて、ベッドメイクですが、作業自体はシンプルなので、「すぐできるようになるだろう」と高をくくっていました。しかし、やってみると案外難しいものです。シーツがきれいに整えられません。
手順としては、マットレスの上にベッドパットを敷き、その上にシーツをかけ、マットレスとボトムの間にシーツを挟み込んでマットレスを包むだけですが、シーツをピーンと張って、四隅の角をきれいに整えるのは至難の業です。私はなかなかきれいにシーツを整えることができず、当初はシーツはぎを専門にやっていました。
思えば、自宅の布団にカバーをかけるのも苦手で、ほとんどやった記憶がありません。それがいきなりホテルのベッドメイクですから、私にとってはかなり無理があります。
特に、三翠園の新館はベッドの高さが低く、本館のベッドと比べると、倍くらい労力がかかります。ベッドメイクしながら、つい「誰がこんな設計にしたんや!」と、腹を立ててしまいました。
2人一組で作業する場合もありますが、2人一組の場合、息が合わないとかえって疲れてしまいます。私は新米なので、なかなかベテランさんのペースについていけません。1人で作業させてもらった方が気持ちよくできます。
このように、なかなか大変なベッドメイクですが、元来、身体を動かすのが好きな方です。ビルメンテナンス業出身ですから現場も大好きです。数をこなしていくうちに、人の作業を見て技を盗み、自分なりに工夫していき、自分で言うのもなんですが、それなりに物になってきました。いいシーツに整った時は、お客さまに喜んでいただけることを想像して、一人でにやにやしてしまいます。
かつて、三翠園は和室が中心の旅館でした。現在は、全面改装を経て客室数は127(和室64、洋室63)と和洋どちらのニーズにもお応えできるようになっています。学校の行事で、学生さんの団体にご利用いただくこともありますが、その場合は和室なことが多いため、寝具は布団になります。なかには、使った布団をきれいに畳むように指導している団体さんもいらっしゃいます。しかし、ほとんどがシーツをはがさずに畳んでくださるため、ホテルの職員は畳んである布団を全部広げて、シーツをはいでまた畳み直すことになります。ご厚意は大変ありがたいのですが、二度手間になってしまい、かえって現場の負担は増えてしまいます。
せっかくのご厚意を無にしないためにも、教育の一環としてご利用くださる団体さんなどには、「布団を畳んでくださる場合は、シーツをはがして畳んでください」と、事前にお願いさせていただくことも考えたいと思います。
先日、三翠園をベンチマーキングに来られた人たちがいらっしゃいましたが、ご無理をいって、チェックアウトの際にシーツをはいでくださるようにお願いしました。
私も、この仕事をするようになってから、以前にも増して部屋を掃除する人のことを意識するようになりました。県外のホテルを利用した際は、シーツなどをすべてはいで、きちんと畳み、回収しやすくしています。
ふと、四国管財時代を思い出しました。四国管財では、どのような宴会をしても、後片付けをするホテルの職員さんのことを考えて、自分たちができることをしていました。例えば、ご迷惑をかけないように、宴会は時間通りに終わることを厳守していました。さらに、終わる10分前ぐらいから、皆が自然発生的に後片付けを始めていました。それも半端ないぐらいの後片付けで、ホテルの職員さんは、回収さえすればいいように、食器をまとめたり、残り物を集めたりしていました。それを当たり前のように、ずっとやってきました。今ならわかりますが、ホテルの職員さんは本当に喜んでくださったと思います。会社として、いい習慣ができていたことを誇らしく思います。