散々な現場デビュー

8月10日から3日間、夜のお食事会場で、ご案内係をさせていただくことになりました。今日は初日、念願の現場仕事デビューです。
ご案内係としての私の仕事は、予約の時間に到着されたお客さまをお迎えし、食券や部屋番号を確認した上で、ファーストドリンクのご注文を承り、お席にご案内するというものです。単なるそれだけの仕事です。仕事に就く前は、「ご案内係ぐらい、誰でもできるんじゃないか」という甘い考えをいだいていました。しかし、それは最初の数秒で吹っ飛びます。

夕食会場は17時30分にオープンします。私は、余裕をもって現場に入ったつもりでしたが、現場ではすでに「おもてなし係」のリーダーが、仕事の段取りについて社員さん、派遣さん、アルバイトさんとミーティングをしていました。どのテーブルにどんなお料理を出して、どのようにするのか、お客さまの到着時間によってどう変えるのか、など真剣に打ち合わせをしています。
今日と明日、高知市では「2022よさこい鳴子踊り特別演舞」が行われます。三翠園でも多くのお客さまに対応するために、特設のレストラン会場を用意しました。事前に予約を承っていますが、遅れて来られるお客さまもきっといらっしゃいます。それによって、仕事の流れを大きく変えなければいけません。時間が押すほど、こちらの作業時間は短くなり、切羽詰まっていきます。事前の段取りが重要です。

今日のような、緊張感あふれるミーティングが、毎晩、毎朝行われていたことを初めて知りました。そのような場に、「現場体験します!」みたいな中途半端な気持ちで来ていた自分が非常に恥ずかしく、申し訳ない気持ちになりました。そして、この仕事は、単純にお客さまをお席まで誘導すれば済むようなものではないことを予感しました。
案の定、私は全く役に立ちませんでした。テーブルの配列と並びが頭に全く入っていなかったので、お客さまの食券や部屋番号を確認しても、お客さまのお席をなかなか見つけられません。手元に一覧表を持っていますが、280以上のたくさんの席がありますので、完全に舞い上がっている状態では、何度見ても見つけることができません。
ようやくお席を見つけられても、ご提供できるお酒、お茶、お水などのメニューが把握できていないため、隣にいるベテランスタッフに、「これはどうでしたか」「あれはどうでしたか」といちいち聞かなければいけない状態でした。「自分はいったい何しに来たんや!」。ひたすら自分に腹を立てていました。
※なので2日目から母が思いを込めて作ったキーホルダーを入口に置きまして自由に選んで頂きましたその間にお席を見つける余裕が少しできるからです
しかし、クレーム対応だけは、(中途半端な)自信がありましたので、何かトラブルがあっても何とかできるだろう、という思い込みがありました。それに、多少ご案内に手間取ったとしても、「今日が初めての現場デビューなもので、本当に申し訳ございません」とお詫びすれば、お客さまもホッコリして、お許しいただけるかなという甘い考えもありました。

そのようななか、大事件が起こってしまいました。お客さまからファーストドリンクのご注文を受け、お席にご案内したのですが、お客さまはお席を見るなり烈火のごとく怒り出しました。
「個室を予約していたはずだけど、どうなっているんだ!」
「ええっ、そうなんですか?」
「そうなんですかって?」
「すみません、少々お待ちください」
ここから何をしたかというと、ベテランのスタッフさんに「もうお願い!」と頼んで替わってもらい、そこからはその場に近寄ることさえできませんでした。自分の対応によっては、お客さまにさらに不快な思いをおかけするかもしれないし、ホテルにも迷惑をかけるからです。
私が対応できなかった最大の理由は、予約を受けた時の状況がわからなかったことです。加えて、私にはこのようなケースで、迅速に段取りをする経験値がなかったことです。
やるべきことはたくさんあります。予約時にどんなやり取りがなされたのか、個室を用意しなければならないことになったとして、現実的に可能なのか、できるとしたらどこの個室を使っていただくのか、個室の準備は誰がするのか、個室へのお料理はどんな流れで運ぶのか、ご注文を受けたお酒はどうするのか、などなど。しかし、この時の私は、トラブルを解決するための術をまったく持っていませんでした。私にできたことは「ええっ?」と、ぼうぜんとするだけだったのです。

私が立ちすくんで見ていると、一人のスタッフがフロントに確認しに走りました。他のスタッフは、どうしたら個室を用意できるかを検討し、それを受けたスタッフは個室の準備を始め、お料理の出し方についても連携して対応に当たっていきました。スタッフは、実に粛々と作業を進めており、頼もしい限りです。
お客さまの予約状況を確認してみると、記録だけでは判断できませんでした。間違いないのはお客様には関係ない話です。
結果、このお客さまは個室にご案内することができました。しかし、時間がたてばたつほど、お客さまを不愉快にしてしまいます。個室にご案内するまで8分くらいかかったでしょうか。私は、ハラハラするとともに、非常に申し訳ない気持ちでいっぱいで、8分が1時間近くに感じました。
有り難かったことは、お料理がおいしいことです。私は、お客さまをご案内しながら、お客さまがどんなふうに召し上がっているのかを見て回っていましたが、皆さん本当に笑顔で、「おいしいね」とほほ笑み合っていました。
個室にご案内したお客さまも、おいしいお料理を召し上がったら、きっと会話も弾み、笑顔になってくださったのではないかと思います。

現場体験の初日は、いろいろなことを目の当たりにしました。お子さま連れの方も多く、大きなケーキで誕生日をお祝いしているご家族もいらっしゃいました。食事場では、いろいろなドラマが展開しています。
私が驚いたことは、お酒を飲む量が少ないことです。高知県の人が、県外に旅行にいくときに比べて、圧倒的に飲まないのです。これは驚きのレベルでした。なかには「お酒はいいわ」と、まったく飲まない方もいらっしゃいました。私は、最近でこそ、ダイエットのために、ノンアルコールビールを飲むようにしていますが、昔なら、生ビール10杯は軽くお代わりしていました。
日本酒は、献杯風習がありますので、高知の人が県外へ旅行に行くと、そのホテルの新記録を樹立するぐらいガンガン飲みます。県外の方もそうなのかと思っていましたが、日本酒はそれほど飲まれていなく、大変驚きでした。
現場を体験して、いろいろなアイデアも浮かびました。例えば飲み物のメニュー表の刷新です。「これ、地味なんやないか」と感じました。もっと工夫して、注文したくなるようなメニュー表にしたいと思います。

今日は散々な現場デビューでしたが、日々いろいろな問題が起こることで、会社は良くなっていくのだと思います。
11日、12日と、引き続き新米ご案内係の奮闘は続きます。11日はもっとお客さまが多い日なので、非常に緊張しています。せっかく、いいおもてなしをしている皆の足を引っ張らないように頑張りたいと思います。
追伸 本日は13日ですが色んな事が発生しました。そして色んな課題や改善点が発見できました。